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保育園の労務監査とは?就業規則や時間外労働がチェックされる
目次
保育施設で行われる労務監査とは、職員の処遇改善や労働環境を把握し、重点的に確認することで、働きやすい現場の構築、保育の質の向上を図るために実施されます。
人手不足が深刻化される保育業界において、労務監査を行い、各施設がよりよい環境となるように点検や改善を目指すことは重要でしょう。
監査では職員の労働状況を把握するために、賃金や勤務時間などさまざまな項目がチェックされるため、該当施設では事前に準備することが大切です。
まずは、近年の労務監査にはどのような傾向があるのかを見ていきましょう。
2019年から施行された働き方改革により、保育施設で実施される労務監査は以前よりも細かなチェックが行われています。
職員の労務に関する離職率や有給取得状況など、さまざまな点が確認され、改善を求められるケースが増加しているようです。
また、就業規則の内容、時間外労働における36協定の締結、労働条件の書面交付などの手続きについての点検が実施されています。
そのため、必要な手続きの明確化と実行、職員の労務管理の徹底を重視して、労務監査に対応できるように努めることが大切でしょう。
保育施設といっても、認可保育所や企業主導型保育所などさまざまな種類があります。
各施設で労務監査の進め方の傾向に違いがあるようです。
例えば、従来から監査項目が多い認可保育所では、以前よりも配置基準などを細かくチェックされる可能性があります。
また、企業主導型保育所に関しては、2023年までに開所予定の施設を含めた約5000施設に実施予定、社労士2名~4名体制で行われる傾向があるようです。
⼩規模保育園では、給与の整備状況など労務面で重点的に確認が行われる事例が報告されています。
このような傾向を把握し、労務監査に対して万全の体制で臨めるように、準備していきましょう。
実際に保育園の労務監査についてどのような指摘があるのでしょうか。事例を参考にすることで、自園での労務監査に備えることができるでしょう。
主に以下の項目の中で指摘されることが考えられます。
具体的な指摘事例を紹介します。
就業規則の確認項目としては「24協定(※)の締結の必要性があるものの、定めていない」、「変形労働時間制を導入している場合に、1カ月単位や1年単位について記載されていない」といった指摘を受ける可能性があるため、注意が必要です。
※24協定:賃金から法定福利費や所得税・住民税以外のものを控除するときに必要となる協定で、労働基準監督署への提出義務はない。
他にも「育児と介護休業規定が抜けている」や「ハラスメント防止に関する方針や規定が抜けている」などをチェックされる場合もあり、事前に法律を下回る規定の有無を確認しておきましょう。
また、「保育園の就業規則は、保育施設の設置事業者である法人の就業規則を流用しているが、実態に伴っていない」といった就業規則と実態の乖離に関して、指摘を受ける可能性があります。
保育所によって残業、有休、育休などの制度は異なりますが、現行制度の実態調査をしながら、就業規則と照らし合わたチェックが予想されます。
正規雇用と非正規雇用の格差をなくすための、同一賃金同一労働においても細かく指摘を受ける可能性も高いことから、非正規職員用の規程をきちんと定める必要もあるでしょう。
職員の処遇改善の指摘事例としては、「職員に処遇改善手当の通知されていない」、「処遇改善の加算ルール通りに職員に支給されていない」などが挙げられ、きちんと賃金の増額に関して取り組みが行われているのか、チェックされています。
国は保育士の処遇改善に向けて、年度ごとに段階的な昇給、役職に応じた手当の増額などに取り組んでいます。
そのため、労務監査においても処遇改善制度に伴い、職員に手当てが支給されていることを示す必要があるでしょう。
勤怠管理については、「手書きの出勤簿にシフト表と同じ時間を記載しているだけだ」、「役員や園長の記録がない」など実際の勤務状況とそぐわない場合に指摘される可能があります。
監査に向けて職員全員の正しい出退勤の記録などを行い、きちんと勤怠管理することが重要かもしれません。
休憩時間に関する指摘として、「出勤簿、タイムカードに休憩時間の記載がない」、「お昼休みが設定されているが、実際は子どもの保育活動をしている」など、報告と実態が異なる部分について確認された事例があります。
また、保育園では子どもたちの午睡時間があり、その間に休憩を交代で取ることが多いようです。
しかし、実際は連絡帳の記入や園内清掃などを行い、休憩していない状況もあります。
事業者は、休憩時間をきちんと取ることができるように勤務時間の調整を行い、出退勤同様に正しい時刻を記載し、実態と相違がないように記録することが大切でしょう。
時間外労働に関しては「36協定(※)が結ばれていない」、「固定残業代が支払われているが実際はもっと働いている」など、働き方に関する矛盾を指摘される場合もあります。
※36協定:時間外‧休⽇労働に関する協定
労働者の所定労働時間は、1日8時間、1週40時間以内という規定が定められています。限度時間以上に働く場合は、時間外労働となり、36協定を締結することを義務づけられています。
そのため、手続きをきちんと行うことはもちろん、時間外労働が発生する場合は適切な賃金を支給し、労務監査に対応していきましょう。
出典:時間外労働の上限規制わかりやすい解説/厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
有給休暇については、「職員の有休の管理簿がない」、「有給制度があっても実際に取得していない」など、有給に関するさまざまな指摘事例が報告されています。
2019年4月より、年次有給休暇制度の施行に伴い、事業者は労働者の勤務状況に合わせて、年5日は有給休暇を取得させなければならないなどのルールが制定されました。
労務監査の際も職員の勤務状況に照らし合わせてしっかり有給を取得させているのか、確認が行われます。
職員それぞれが適切に有休を取ることができる環境を整備して、監査に対応していきましょう。
出典:年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説/厚生労働省
各保育施設では規模に応じて職員の配置基準が設けられていますが、「規定に沿った人材配置がきちんと行われていない」、「常勤の有資格者の人数が足りない」など、配置人数に関しての指摘を受けた場合もあるようです。
人手不足の中で国が定めた配置基準を守ることが大変な保育施設もあるかもしれませんが、子どもを安全に保育するうえで大切な基準となります。
職員の担当を明確にしてきちんと配置基準を満たすことができるように、取り組んでいきましょう。
労務監査では職員の働きやすい職場を作り上げるために、どのように環境を整備しているのか確認されることもあります。
例えば、健康診断の実施や育休の取得規定などさまざまな項目がチェックされることが考えられます。
義務づけられている項目に関して適切な処理が行われているのか、手続きに漏れはないかなどを事前に確認して、労務監査に備えて準備することが大切です。
労務監査の指摘事例について紹介しましたが、監査では報告と勤務実態に矛盾がないのかを細かくチェックされることが考えられるでしょう。
しかし、施設によっては「職員の勤怠管理はタイムカード頼み」、「多様なシフトパターンがあり、有給の管理が追いついていない」など、勤務状況の把握が困難な場合もあるようです。
このような問題を解消するためにも、近年注目されているのが「ICTシステム」です。
このシステムを活用すると「職員の出退勤の管理記録」、「有給休暇の取得・有効期限の把握」、「勤務データに応じた時間や賃金の自動集計」などを、タブレットやパソコンで一括管理することができます。
国もICTシステムの導入を推進しており、ICTシステムを活用している園で監査が行われた場合に高い評価を得たというケースも報告されています。
ICTシステムの導入は、労務管理を徹底するうえで大きな手助けとなるでしょう。
労務監査は職員の労働の権利を保護するためだけでなく、子どもたちの保育の質の向上に向けて大切なものです。
職員が働きやすい職場を作り上げることで、やりがいをもって働くことにつながり、保育に対する意識も高まることが期待できるでしょう。
しかし、保育施設の中には業務が多忙で監査に対応しきれない場合や、どのように準備すればよいのか不安を感じるケースもあるかもしれません。
監査に向けて万全な準備を行うためにも、ICTシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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