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保育士不足の課題克服に保育業界で取り組める生産性向上施策とは
目次
そもそも「生産性」とは、決まった労力の中で、どれだけ多くの価値や効果を生み出すことができたかという程度のことを示しています。
決められた労力の中で、生み出された価値や効果が大きければ「生産性が高い」といい、小さいと「生産性が低い」という表現になります。
そのなかで、作業を効率的に進め、新たな付加価値を生み出すために行う取り組みのことを一般的な「生産性向上」といいます。
生産性向上を行うことで、より少ないコストで生産が可能になる、労働の余暇を増やすことができる、
利益を上げられるなどといった付加価値を生み出すことが可能になるでしょう。
生産性向上とは、一般的に使われている意味と、保育業界における意味とで、少し異なっているようです。
保育業界では、ほかの業界に比べると、働いた時間や仕事量などで生産性を測定することが難しいとされています。
厚生労働省「各業種における生産性向上の具体的な取組」の資料によると、
保育業界では、子どもの人数に応じた職員の配置を通じて、一定の保育の質を確保を求めていること、
公定価格が決められているため収入の変動がないということから、労働生産性という形で測定しづらいと説明しています。
そのため、保育士一人ひとりの業務負担を減らし、保育士の人材確保を目的とした取り組みを行うことが、
保育業界における生産性向上といえるようです。
保育業界において、生産性向上に向けた取り組みを行うにあたり、
といった現状と課題があります。
内閣府「医療分野・保育分野・介護分野における 生産性向上の取組について」の資料では、
現在、少子高齢化が進む一方で、女性の就労が進んでいる現状にあるとしています。
子育てをしている家庭の場合、働く女性が増えると、保育所等に子どもを預ける家庭が増え、
保育所等の利用率が上昇していく傾向にあります。
さらに、保育所等の数は増加傾向にあるものの、利用ニーズに追いつかず、
都心部を中心に待機児童が発生しているという現状もあるようです。
つまり、保育の受け皿が拡大している現状に対し、保育士不足が課題となっているということです。
厚生労働省「保育士の有効求人倍率の推移(全国」の資料をみてみると、平成29年度の直近の有効求人倍率は2.76倍となっており、
年々、保育士不足が増加している状況となっています。
有効求人倍率とは、求人数に対してどれくらい求職者がいるかということを倍率にして表したもので、
(求人数)÷(求職者数)=(有効求人倍率)として計算することができます。
有効求人倍率が1倍を基準に、「高い」「低い」を考えていき、有効求人倍率が高いと求人数が多い、
有効求人倍率が低いと求人数が少ないということになります。
つまり、求人数が高い場合は、保育士を求めている保育施設が多く、保育士が不足している状況であるということがいえます。
現在、保育士としての平均勤続年数は他業種よりも短いという現状があります。
厚生労働省「保育士等に関する関係資料p7」の資料によると、
全職種の平均勤続年数が12.1年に対し、保育士は7.6年となっています。
さらに、厚生労働省「保育分野における人材不足の現状②」の資料をみてみると、
半数以上が勤続年数5年未満となっていることもわかります。
調査対象:保育資格を有しながら保育士としての就職を希望しない求職者のうち、保育士としての勤務経験があるもの
このように、保育士は全職種のなかで平均勤続年数が短いだけでなく、「仕事量の多さ」「労働時間が長い」などといった理由から、
保育士として就職しても、早期離職をしてしまう傾向にあるようです。
保育業界では、保育士の処遇改善を踏まえたキャリアアップの仕組みを構築させることで、生産性向上につながるでしょう。
厚生労働省「保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善について」の資料によると、
近年、保育士の処遇改善は年々改善している傾向にあり、
平成24年度から平成29年度の処遇改善の推移が、約10%(最大4万円)もアップするとされてます。
さらに、この処遇改善の状況を踏まえて、保育士職員の職務や職責に応じたキャリアパスを明確にするなどの
「キャリアアップの仕組みを構築」させることで、保育士の専門性の向上や保育の質の向上も期待できるでしょう。
そこで、保育士の処遇改善を踏まえたキャリアアップの仕組みを構築させる取り組みに、「キャリアアップ研修」があります。
キャリアアップ研修には、分野別研修があります。
目指す役職によって要件が異なります。
職務別リーダーをめざす場合、以下の要件を満たす必要があります。
職務別リーダーの場合、月額5千円の処遇改善になります。
7次締切分:2024年10月8日 (火) → 交付決定日:2024年11月22日(金) 予定
追加公募対象枠:通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型)、インボイス枠(電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠、複数社連携IT導入枠
※確定している募集回のスケジュールになります。以降のスケジュールは随時更新いたします。
※一般的に公募が遅くなるにつれて、通過(採択)率が下がるとされているため、お早めの申請をおすすめしております。
※手続きに時間がかかるため、締切は弊社ヘルプデスクの受付締切日を記載しております。
副主任保育士をめざす場合は、以下の要件を満たさなければなりません。
専門別リーダーをめざす場合は、以下のような要件が対象となります。
副主任保育士と専門リーダーについては、月額4万円の処遇改善になります。
保育士のキャリアアップ研修は、自分の経験年数に応じて指定の研修を受けると、昇格・処遇改善がされる仕組みとなっています。
経験年数を積み重ね、年数に応じた研修を受けると、さらなる昇格や処遇改善が期待できそうです。
このような処遇改善を含めたキャリアアップ研修の施策を打ち出すことで、保育の質を向上させるだけでなく、
保育士のモチベーションアップや人材確保が期待できるでしょう。
保育業界における現状と課題がわかったところで、保育業界では生産性向上のためにどのような施策を行う必要があるのでしょうか。
保育業界の生産性向上に向けて、取り組める施策について紹介します。
保育業界では、保育士の業務量の多さにより離職者が増えている傾向にあります。
そこで取り組まれているのが「保育補助者の雇上げ強化事業」です。
内閣府は、この事業について以下のように説明しています。
保育所等における保育士の負担を軽減し、保育士の離職防止を図ることを目的として、保育士の雇用管理改善や労働環境改善に積極的に取り組んでいる保育事業者に対し、保育士資格を持たない短時間勤務の保育補助者の雇い上げに必要な費用を支援する。
保育補助者には、保育士修学資金貸付等を活用し、保育士資格取得に努めることが支給条件になっているなど、
保育士一人ひとりの業務負担を減らすだけでなく、保育士の人材確保につながる施策となっています。
ICTシステムとは、業務を効率化する業務支援システムです。
最近では、さまざまな業界において労働者の業務負担を削減する対策として、ICTシステムの導入が推奨されており、
近年保育業界でも、ICTシステムの導入を検討している保育園や幼稚園も増えているようです。
厚生労働省の資料では、保育業界が目指す姿として、以下のように説明しています。
情報通信技術(ICT)の活用による内部業務の効率化や、保育補助者の雇上げ等に取り組むことにより、保育所等において、保育人材 の業務負担の軽減を図り、勤務環 境の改善となる。
最近では、保育現場へのICT化を推進するとして、ITツールやシステム導入費の一部を支援するとして、
助成金制度を実施している場合もあります。
ICTシステムは、手作業で行っている業務を自動化し、業務内容を簡素化するほか、
システム上で一括管理できるためスムーズに仕事を進められるでしょう。
また、大幅な業務量の削減・業務時間の短縮が期待できそうです。
保育業界に対しての生産性向上に向けた施策がさまざま行われている一方で、
生産性向上をするとどのような影響や問題の解消につながるのでしょうか。
現状と課題を踏まえて解説していきます。
生産性向上の取り組みの一つである、処遇改善を踏まえたキャリアアップの仕組みづくりの構築を行うことで、
保育士としてのキャリアや給料を上げるチャンスが広がるといえるでしょう。
厚生労働省「保育士のキャリアアップの仕組みの構築と処遇改善について」の資料によると、
研修等を実施することで、自身の職位や業務内容が理解しやすくなり、キャリアパスも明確になるため、
自分の経験年数に応じたキャリアを目指すことができるとしています。
保育園を例にすると、これまでのキャリアアップは園長と主任保育士のみだったのに対し、
キャリアアップの仕組みが導入されたあと、副主任保育士、専門リーダー、職務分野別リーダーといった新たな役職も加わりました。
そのため、若手保育士や中堅保育士でもキャリアアップがしやすくなり、自分の経験年数に応じたキャリアを目指せるようになったことで、
これまで以上に保育士としてのキャリアや給料を上げるチャンスが広がったといえるでしょう。
さらに、キャリアアップ研修を行うことで、保育士としての専門性も向上させることができるので、
保育士として一度離職し、再就職を目指す場合にも、職場復帰への効果が高いとされています。
保育業界の生産性向上の取り組みである「保育現場へのICT化」を行うことで、
などが期待できるため、保育士一人ひとりの業務負担の削減を実現することができるでしょう。
保育業務のICT化によって業務が簡素化され、作業時間が大幅に短縮できれば、
残業時間の削減や希望にあわせた休みが取りやすくなるなど、労働環境の改善や職場環境の改善も期待できるでしょう。
保育士にとって働きやすい環境整備が整えば、保育士の人材確保にもつなげることができそうです。
保育業界の生産性向上を行うことで、保育の質を向上させることができるでしょう。
キャリアアップ研修を実施すれば、保育士としての専門性を向上させることができるだけでなく、
保育への理解や知識を深めることができます。
さらに、保育業務をICT化することで、事務作業が簡素化され、作業時間の短縮が可能になるため、
これまで事務作業にかけていた時間を子どもと向き合う時間に費やすことができそうです。
保育への理解や知識を深めることができたり、子どもと向き合う時間が増えれば、
子どもの保育について考える時間等が増えるので、さらなる保育の質の向上へとつなげることができるでしょう。
保育業界における生産性向上は、保育士不足の課題克服へ向けた取り組みであるといえるでしょう。
保育士の人材確保へ向けた取り組みには、処遇改善を踏まえたキャリアアップの仕組みの構築や、
保育業務のICT化などさまざまあり、保育現場の処遇や職場・労働環境の改善を図るためには大切な取り組みといえるでしょう。
保育士の処遇や、職場・労働環境を改善することができれば、保育士として働きやすい環境が整い、
保育士確保へつなげることができるかもしれません。
働き方改革が進むいまだからこそ、現状の課題を克服し、保育現場の生産性向上に向けた取り組みを積極的に行い、
保育士確保を実現していきましょう。
ご入力のメールアドレスに資料を
お送りいたします。
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