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保育士の処遇改善加算とは?「Ⅰ」と「Ⅱ」の4つの違いを徹底解説

保育士の処遇改善加算とは?「Ⅰ」と「Ⅱ」の4つの違いを徹底解説 Paylessimages/stock.adobe.com
保育士の処遇改善制度の策定により、月額5千円〜4万円の給与の増額などが進められています。この制度には処遇改善等加算ⅠとⅡがありますが、実際にどのような違いがあるのでしょうか。2022年には期間限定で月額平均9千円(収入の3%程度)の引き上げも実施。処遇改善加算の概要、ⅠとⅡの異なる点について詳しく解説します。

目次

    保育士の処遇改善加算とは~必要な背景~

    保育士の処遇改善加算とは、国が保育士の賃金アップや労働環境の改善を図るために策定した制度です。

    保育士という職種は以前から子どもの命を預かる責任のある仕事ながら「給与が安い」「仕事量が多い」などのさまざまな問題が取り沙汰されていました。

    2021年10月の有効求人倍率が2.66倍と人材獲得競争が高まっており、保育の受け皿を整備する中で、保育士不足が大きな課題となっています。

    そういった状況の打開策として、処遇改善加算の取り組みが始まり、着実に保育士を取り巻く環境が変わってきています。2022年には期間限定で月額平均9千円(収入の3%程度)の賃金引き上げも実施されます。

    厚生労働省の「『保育士数』と『保育士の年収』の推移」によれば、2019年度の保育士の平均年収は364万円と、前年比よりも6万円高くなっていることがわかりました。

    保育士の年収推移

    出典:保育士の現状と主な取組p38/厚生労働省からの抜粋

    上記のように保育士の賃金は上昇傾向にあり、今後も処遇改善加算による賃金アップが期待されます。

    保育士という大切な担い手を育てるうえで、賃金の底上げは必要なことでしょう。

    保育士の処遇改善には2つの種類があり、それぞれ役割が異なります。

    「処遇改善等加算Ⅰ」と「処遇改善等加算Ⅱ」の詳しい内容や違いを知り、保育士の環境改善に目を向けていきましょう。

    出典:保育士の有効求人倍率の推移(全国)

    出典:保育士の現状と主な取組p38/厚生労働省からの抜粋

    出典:処遇改善等加算IIに関する研修受講要件について

    保育士の処遇改善等加算Ⅰとは

    処遇改善等加算Ⅰとは、職員の平均勤続年数によって加算率が上がる制度のことを指します。

    「平均経験(勤続)年数」は各施設や事業所等に在籍する職員一人あたりの勤続年数を全て合算し、その値を対象となる職員数で割って算出します。

    また、職員が以下の施設の勤務経験がある場合は、その年数を継続年数としてあわせることも可能です。

    ・幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・大学・高等専門学校、専修学校
    ・社会福祉事業を行う施設、事業所・認可外保育施設・病院・診療所・介護老人保健施設・助産所・児童を一時保護する児童相談所など

    正規職員のほか、1日6時間以上かつ月20日以上就労するパートやアルバイトといった非正規職員も対象となるため、施設で働く多くの方の給与の増額が期待できます。

    処遇改善等加算Ⅰについては、「①基礎分」「②賃金改善要件分」「③キャリアパス要件分」の3つの要素で成り立ちます。内閣府の資料による加算イメージは以下の通りです。

    処遇改善加算システム

    出典:2018年子ども・子育て支援新制度市町村向けセミナー資料/内閣府から抜粋

    【各項目の内容】

    ①基礎

    基礎分とは各施設の職員1人あたりの平均勤続年数にあわせて加算率を上乗せする仕組みです。対象となる全職員の勤続年数の合算して、「対象となる職員数」で割った値を施設の平均勤続年数として算出し、賃金に2~12%加算されます。

    ②賃金改善要件分

    賃金改善要件分とは、施設で賃金改善の取り組みが適切に行われているか、賃金改善計画・実績報告をふまえたうえで加算される仕組みとなります。平均継続年数によって加算率に違いがあり、11年未満の場合は一律5%、11年以上の場合は一律6%としています。

    ③キャリアアップ要件

    キャリアアップ要件とは、職員のキャリアアップに関する要件を満たした場合に加算される仕組みです。
    役職や勤務条件・賃金体系の設定、職員の資質向上に向けた計画策定や研修の実施などを行った場合に加算されます。条件が満たされない場合、②から2%加算率が減るため注意が必要です。

    保育施設は園の職員の勤務年数や状況を把握したうえで自治体に申請書を提出し、国から受け取った金額を職員に支給する必要があります。

    保育士の処遇改善等加算Ⅱとは

    処遇改善等加算Ⅱとは、保育士のキャリアアップに向けて研修体制を確立し、技能や経験を積んだ保育士に対して賃金を上乗せする仕組みです。

    保育施設では主に「園長先生」「副園長先生」「主任」といった3つの役職のみで運営する園も多く、役職が少ないことから「キャリアを積んでも役職に就けない」「経験を重ねても昇給できない」などさまざまな不満を感じ、離職してしまう方もいたようです。

    そのため、国は新たに3つの役職を作り、保育士がある一定の条件をクリアして研修を修了することですることで、月額5千円~4万円の賃金加算が受けられるよう、制度を策定しました。

    3つの役職とは

    新たに追加された役職は以下の通りです。

    <副主任>

    経験年数概ね7年以上、職務分野別リーダーを経験し、計3分野以上の専門研修とマネジメント研修後に職位の認定を受けることで月額4万円の処遇改善が受けられます。

    <専門リーダー>

    経験年数概ね7年以上、職務分野別リーダーを経験し、計4分野以上の専門研修を修了し、職位の発令を受けることで月額4万円処遇改善を受けられます。

    <職務分野別リーダー>

    経験年数概ね3年以上、6分野のうち担当する職務分野の研修を終了し、職位の発令を受けることで月額5千円の処遇改善が受けられます。

    上記の条件に満たしていれば加算対象となります。

    ただ、園の中の加算対象人数分園長・主任保育士等を除いた職員の概ね1/3又は1/5といった制限があり、要件を満たしているからといって必ず処遇改善の対象となるわけではないのでその点に注意しましょう。

    キャリアアップ研修とは

    処遇改善に関するキャリアアップ研修は各地で開催されます。

    研修内容は以下の通りです。

    • 乳児保育
    • 幼児教育
    • 障害児保育
    • 食育・アレルギー
    • 保健衛生・安全対策
    • 保護者支援・子育て支援
    • マネジメント研修
    • 保育実践研修

    職員が研修に参加する場合に1分野で15時間以上の受講が必須となるため、勤務調整などを行う必要があるかもしれません。

    研修内容を理解しておけば、自治体に提出する賃金改善計画の策定や実績報告を行う際に役立つでしょう。

    年度ごとに開催場所が異なる可能性もあるため、自治体にきちんと確認することが大切です。

    保育士の処遇改善等加算Ⅰと処遇改善加算Ⅱとの違い

    ここからは保育士の処遇改善加算Ⅰと処遇改善加算Ⅱとの違いについて見ていきましょう。

    目的

    処遇改善等加算ⅠとⅡでは、どちらも「保育士の給与を上げる」という最終目的は同じになりますが、処遇改善としての目的が異なります。

    処遇改善等加算Ⅰの場合は、

    「職員の賃金改善や各園の状況をきちんと把握すること」を目的としています。

    一方、処遇改善等加算Ⅱの場合は

    「保育士の技能や経験に応じてキャリアアップできる組織体制の整備を目指すための賃金改善」を目的として策定されました。

    このような目的の違いも抑えたうえで制度内容を把握することが大切でしょう。

    対象者

    処遇改善加算Iと処遇改善加算IIでは、対象となる保育士の範囲が異なります。

    処遇改善等加算Ⅰの場合は、

    「非常勤職員を含む、すべての職員が処遇改善の対象者」と説明しています。

    また、該当条件として、1日6時間以上かつ20日以上勤務する職員であれば、保育士以外の事務員や調理員なども対象になります。

    一方、処遇改善等加算Ⅱの場合は、

    「保育士としての経験年数が3年以上の職員が対象者」になります。要件としては「目指す役職に必要な研修の修了」が必要です。

    このように対象者に違いがあるため、その点を確認しましょう。

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    ※手続きに時間がかかるため、締切は弊社ヘルプデスクの受付締切日を記載しております。

    補助金に関するお問合せ

    給与の上がり方

    処遇改善等加算ⅠとⅡでは、給料の上がり方が異なります。

    処遇改善等加算Ⅰの場合は、

    職員一人当たりの平均継続年数によってもとに「①基礎分②賃金改善要件分③キャリアパス要件分」の3つの要素を算出します。年度ごとに平均継続年数が変わるため、その数値にあわせて加算率が変動します。

    職員一人当たりの平均継続年数における加算区分も以下の通り細かく分けられています。

    加算率

    出典:施設型給付費等に係る処遇改善等加算Ⅰ及び処遇改善等加算Ⅱについてからの抜粋/厚生労働省

    「平均経験年数に応じた分だけ、対象となる職員全体の給料が上がる」という仕組みになっています。

    一方、処遇改善等加算Ⅱの場合は、

    「対象となる職員による所定の研修の修了・要件に応じた給与が月額5千円から最大月額4万円の給料が上乗せされ、給料アップを実現できる」という仕組みになります。

    このように給与の上がり方に違いがあるため、その点を把握するとよいでしょう。

    配分方法

    処遇改善等加算ⅠとⅡでは、職員への配分方法が異なります。

    処遇改善等加算Ⅰの場合の配分方法については、

    「基礎分」「賃金改善要件分」において、基本給や手当などに充当する形で適切に昇給する必要があり、同じ事業所内であれば他の教育・保育施設の職員にも充当することが可能となります。

    一方、処遇改善等加算Ⅱの場合の配分方法は要件によって配分方法に違いがあります。

    職務分野別リーダーは、月額5千円の加算が決められています。

    副主任保育士や専門リーダーについては、1人あたり月4万円の加算することができるものの、「月額4万円を支給する職員を1人以上の確保」「職員1人あたりの配当額を月額5千円~4千円未満」という条件を満たせば、加算額を他の職員に配分することが可能になります。

    このように配分に関する要件や方法に違いがあるため、その点に注意しましょう。

    処遇改善は国からの補助金によって加算額が支給されるため、保育所が申請する必要があります。そのため、自治体に提出する書類などを確認し、速やかに手続きを行うことが大切になるでしょう。

    出典:2018年度 子ども・子育て支援新制度 市町村向けセミナー資料/内閣府

    保育士の処遇改善の仕組みを知ろう

    待機児童問題の解決のために保育の受け皿が整備される中、保育士の人材不足は深刻な状況です。

    このような処遇改善を着実に行うことで保育士一人ひとりが働きやすさを感じることができるでしょう。

    また、保育士資格を保有しながらも保育施設で働いていない潜在保育士の復職の後押しにつながるかもしれません。

    保育士の処遇改善制度を知り、労働環境改善に目を向けていきましょう。

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