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保育所児童保育要録とは?項目別5つの例文・書き方マニュアル

保育所児童保育要録とは?項目別5つの例文・書き方マニュアル Paylessimages/stock.adobe.com
保育施設と小学校の連携を行う際に大切な「保育所児童保育要録」。年長児担当の保育士さんが子どもの「成長過程」「性格」などを記入します。卒園後も小学校教育が適切に進むよう、それぞれの子どもたちの特性をわかりやすく文章で表現する必要があるでしょう。保育所児童保育要録の様式や項目別の5つの例文、効率的な書き方マニュアルを詳しく紹介します。

目次

    保育要録とは

    保育所児童保育要録とは、小学校の入学に向けて「子どもの様子」や「発達状況」「特性」、「留意事項」などを詳しく記載した引継ぎ資料のことを指します。

    年長クラスの担任が書き、子どもが入学する小学校に提出します。卒園後も小学校で適切な教育や指導を受けられるよう、保育施設ですごした内容をわかりやすく記入することが大切です。

    保育所児童保育要録の様式は以下の2つです。

    ・入所に関する記録
    ・保育に関する記録

    入所に関する記録は子どもたちの基本的な情報を書き、保育に関する記録は子どもたちの育ちを具体的に記入する必要があります。

    厚生労働省示した「様式」の内容です。

    様式①入所に関する記録

    様式にあわせて入所に関する記録を正確に記入します。

    保育所児童保育要録とは?項目別5つの例文・書き方マニュアル

    様式②保育に関する記録

    文章から子どもたちの保育所ですごした内容をイメージできるように具体的に記入していきます

    保育所児童保育要録とは?項目別5つの例文・書き方マニュアル

    記録を記入する際は、厚生労働省が定めた「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」の内容を確認しておきましょう。年長児が保育所で育みたい資質や能力を示したものです。

    <幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿>
    ◎健康な心と体 ◎自立心 ◎協同性 ◎道徳性◎規範意識の芽生え◎社会生活と関わり
    ◎思考力の芽生え ◎自然との関わり・生命尊重 ◎量・図形、文字等への関心・感覚
    ◎言葉による伝え合い豊かな感性と表現

    幼稚園や認定こども園といった保育施設の大切な共通指標となります。

    厚生労働省の「保育所保育解説p73~p96」の中でも内容が詳しく記載されているため、チェックしておくとよいですね。

    出典:保育所児童要録/厚生労働省

    出典:幼児期の終わりまでに育ってほしい幼児の具体的な姿(参考例)/厚生労働省

    出典:保育所保育解説p73~p96/厚生労働省

    保育要録「保育に関する記録」の項目別例文5選

    保育に関する記録は個人記録や連絡帳、保育計画・日誌などを参考に作成しますが文章がうまくまとまらずに悩む方もいるでしょう。

    ここでは項目別に例文を紹介します。

    最終年度の重点

    年度当初の全体的な計画をもとに長期の見通しの中で重点とした内容を記載します。

    子どもたちが1年間を通して「どのようなねらいや目標に向けて、園生活をすごしているのか」を記入していきましょう。

      【例文】

    • 友だち同士での関わりの中で、親しみを深め、共に目的や課題に向かって協力する楽しさを味わう
    • 集団生活の中で仲間意識を育みながら、意見交換を行うなどして意欲的に活動する喜びを感じる
    • 基本的な生活習慣を身につけ、それぞれが自主的に課題を見つけて取り組む姿勢を養う
    • 友だちとすごす中で豊かな感性を育み、自主性や協調性といった社会的能力の大切さを感じる
    • 集団生活の中で互いの存在を意識しながら個々の能力を十分に発揮する

    個人の重点

    1年間を振り返り、対象の子どもについて保育士さんが重視した指導内容を記入します。

    保育記録をもとに作成し、普段の保育活動の中でどのような言葉がけを行っていたのかを振り返りながら、子どもの特性を意識して要約するとよいでしょう。

    【例文】

    • さまざまな遊びに興味や関心をもち、遊びの中で友だちの意見を聞く大切さや協力するよろこびを感じる
    • 自然環境に対して好奇心や探求心をもち、友だちと意見を出し合い、遊びを展開するなどして新しい発見を互いに分かち合う
    • 意欲的にさまざまな活動に取り組み、チャレンジする楽しさや失敗する悔しさを感じながら達成感を味わう
    • 活動の中で自己を表現する大切さを感じ、自主的に他者との関わりの機会を持つ
    • 自分の身の回りのことを積極的に取り組み、経験の積み重ねによって満足感を味わう

    保育の展開と子どもの育ち

    年長児一人ひとりの様子について、養護と教育に関する事項の一体化を考慮しつつ、子どもの発達や特性などの向上について著しいと思われるものを記入します。

    小学校で子どもたちを受け持つ先生が「どのような点を配慮しながら子どもと関わるべきなのか」指導の参考となるように、記載するとよさそうです。

    「幼児期にまでに育ってほしい姿」を活用して客観的に対象園児の園生活を振り返りながらエピソードをまとめてもよいですね。

    【例文】

    • 生活発表会では楽器演奏に集中して取り組み、自主的に友だちと練習するなど積極的に活動を行う姿勢が見られた。
    • 生き物に対して興味や関心をもつことが多く、虫取りを行った際は虫の捕獲方法について友だちと言い合いになることがあったが、次第に友だちの意見に耳を傾け、ともに遊びを楽しむ姿があった。
    • 自ら年少クラスに出向きお世話する姿が見られた。自分の気持ちを表現することが難しい場面もあったが、仲のよい友だちに少しずつ自分の意見を言えるようになった。
    • 運動会や生活発表会では、先頭に立ってクラスをまとめる姿があった。自分の意見を伝える中で友だちとのやり取りがスムーズに進まないときもあったが、徐々に友だちの言葉に耳を傾けることができるようになった。
    • 誕生日会ではいつも大きな声で友だちにお祝いの歌を歌い、クラスを盛り上げてくれていた。「おはよう」「さよなら」の挨拶をきちんと伝えることができ、身の回りのことを自主的に取り組む姿が見られた。

    最終年度に至るまでの育ちに関する事項

    子どもの入所当初から最終年度までの育ちについて重要と思われる点を記載します。

    対象園児の保育記録などを振り返りながら、今まで担当した保育士さんに子どもの様子を確認するとよいでしょう。

    「0歳児のときは~」など子どもの具体的な年齢を記載したうえで成長や変化を記入するとよいですね。

    【例文】

    • 2歳児のときは、自分の身の回りのことは全て納得がいくまで頑張りたいという思いから、何度も靴下を履き直したり、ハンカチを畳み直したりとこだわりが強かった。
      5歳児になると年少クラスで優しくお世話する姿も見られ、こだわりながらも丁寧に関わっていた。
    • 3歳児入園当初は環境に馴染めずに泣いている姿が多かったものの、好きな遊びを見つけて少しずつ園生活に慣れていった。
      4歳児・5歳児ではリレーの選手に選ばれたいという気持ちから毎日園庭を走り、挑戦する姿が見られた。リレーの選手になれずに落ち込んでいたときもあったが、運動会では大きな声援を送り、一生懸命友だちを応援していた。
    • 2歳児入園当初は友だちに自分の意見を伝えることができず、保育者の側にいることが多かった。進級後少しずつ友だちとの関わりが増え、特定の友だちとごっこ遊びをよくしていた。
      5歳児になると自由活動の中で絵本をよく読み、年少組にいる妹に読み聞かせをしている姿があった。自分の身の回りのことを丁寧にこなし、周りの子が困っているときは手伝いをしていた。
    • 0歳入園当初はすぐに園生活に慣れ、保育者の後をよく追っていた。手遊びに興味を持ち、笑顔で取り組んでいた。
      2歳・3歳児頃は友だちと言い合いになると保育室を出ていくこともあったが、言葉が増えて意志の疎通がスムーズになってからは言い合いも減った。
      5歳児クラスでは約束事が守れずに注意される場面もあったものの、反省して自ら保育者に謝りにくることもあった。
    • 1歳児入園時当初は給食時に座れずに歩くことが多かったが、次第に座って食事を食べられるようになった。
      弟の入園後は自由活動中に弟の保育室で仲よく遊ぶ姿が見られた。4歳児・5歳児クラスでは鬼ごっこやドッジボールなど友だちと楽しく身体を動かして遊んでいた。
      実験遊びに関心を持ち、小学校での授業を心待ちしている様子もあった。

    保育に関する記録では、子どもたちの性格や個性を文章で伝えられるよう、園生活の中でのできごとをふまえてまとめられるとよいですね。

     

    保育要録の書き方ポイント

    子どもたちそれぞれの特性をふまえて書くことから、保育要録の記入には時間がかかることが想定されます。

    卒園時期は卒園製作や卒園式の練習などで忙しい保育士さんもいるかもしれません。

    文章をまとめる際は以下の点に注意して書き方を工夫するとよいでしょう。

    • 小学校の先生が読むことを意識する
    • 子どもの個性や特性を表す言葉を使う
    • 「保育所保育指針解説」や「幼児期の終わりまでに育ってほしい幼児の姿」を参考にする
    • ネガティブな表現を使用しないように注意する
    • 誤字脱字がないように気をつける

    小学校の先生にとって保育要録はそれぞれの子どもの乳幼児期を知ることができる大切な資料になります。

    そのため、提出する保育士さん側は子どもたちの乳幼児期を紹介する気持ちを大切に、わかりやすい言葉で表現することを心がけましょう。

    次に保育要録を作成する際の書き方マニュアルとして4つの手順を紹介します。

    保育要録の書き方マニュアル:①資料の収集・担当保育士さんに話を聞く

    まずは個人記録や連絡帳、保育日誌などの資料を集めましょう。その際に整理するための収納袋や箱を用意しておくとよいかもしれません。

    また、今まで担当した保育士さんに話を聞くことも重要です。年齢ごとの子どもたちのエピソードを詳しく聞いて性格や特性を記録しておきましょう。

    保育要録の書き方マニュアル:②スケジュール作成・調整

    資料が集まったらスケジュールを作成していきましょう。

    全体の資料の読み込みにどのくらい時間がかかるかは記録を集めてからでないとわからないものです。

    また、今までの担当保育士さんが子どもたちについて簡単にまとめているものがあれば、それを参考に記入することもできるでしょう。その際は時間をかけずにスムーズに作成できるかもしれません。

    そういった点などもふまえて、普段の仕事とのバランスを考えながらスケジュールを調整していきましょう。

     

    保育要録の書き方マニュアル:③箇条書きに内容をまとめる

    次に箇条書きに内容をまとめていきます。過去に作成した保育要録を参考にすると書きやすいかもしれません。

    成長したことやその子が苦手だったことも記入していきましょう。ただ、ネガティブな表現はNGなので、「~の一面もあった」「~の姿が見られた」など客観的な視点で書くとよさそうです。

    保育要録の書き方マニュアル:③下書き・本番作成

    手書きよりもパソコンやタブレットで作成したほうが入力・修正作業が捗るでしょう。箇条書きにまとめた文章をもとに下書き、または本番を作成します。

    パソコンやタブレットで活用する場合は文章のミス・誤字脱字などをチェックできるシステムが備わっている場合もあります。

    音読したり、作成後時間を置いて読み直したりと修正点がないか確認していきましょう。

    保育要録の書き方マニュアル:④主任または園長先生などからのチェック

    保育要録を作成後、学年主任や園長先生などに提出し、チェックしてもらうことが多いでしょう。

    その際にそれぞれの子どもの性格や個性について質問されることもあるかもしれません。すぐに応対できるように資料をまとめておくことも大切ですね。

    子どもたちの成長過程を表した保育要録を作成しよう

    幼児期と学童期をつなぐ大切な指標となる「保育所児童保育要録」。

    子どもたちの幼児期を小学校の先生に伝えるための重要な書類です。

    作成に時間がかかることも予想されるため、あらかじめ計画を立てたうえでスケジュールを調整する必要もあるでしょう。

    また、紙による書類提出が考えられますが、今後はICTシステムの活用やペーパーレス化が進み、保育所、小学校間でパソコンやタブレットでの送付が定着化するかもしれません。

    ICTシステムを活用した園では、園児情報を一括管理しているため、保育要録に使用する資料を集める際も保育士さん同士で簡単に共有することができるでしょう。その際は、使用方法などを職員同士で確認し、効率的に文章をまとめられるとよいですね。

    小学校教育への引継ぎがスムーズに進むよう、保育所児童保育要録を作成していきましょう。

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