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保育のヒヤリハット事例・対策を徹底解説!10の危険や事故を防ぐ
目次
ヒヤリハットとは、重大な事故やケガに遭わなかったものの、危険を感じてヒヤッとしたことやハッとした事象のことをいいます。
厚生労働省の「2020年教育・保育施設等における事故報告集計の公表」の資料では、認定こども園・幼稚園・保育所等における事故報告数を1586件と発表しています。
前年の報告数と比べ287件増加しており、そのうちの1281件が骨折の事故であることも明らかとなりました。
こういった事態を防ぐためにも、保育施設で起こりうるヒヤリハット事例を把握し、環境を整えることが大切です。
保育施設の環境整備について
「適切なルールやマニュアルが作成されていない」
「子どもの行動に対する把握が不十分」
「職員間のコミュニケーション不足」
などの問題があると、「ヒヤリ」「ハッと」した出来事がいつしか重大な事故につながる可能性もあるかもしれません。
きちんと対策を立てたうえで、明日からの保育活動に役立てていきましょう。
まずは厚生労働省「保育所におけるリスク・マネジメントヒヤリハット/傷害/発症事例報告書」などで実際に報告された事例なども参考に保育現場に潜むヒヤリハットについて紹介します。
出典:2020年教育・保育施設等における事故報告集計の公表/厚生労働省
園庭やホールなど大人数で遊ぶ際に転落や転倒が発生することが多いかもしれません。敷地内にすべり台やブランコ、うんていなどさまざま遊具を設置する園もあるでしょう。
転落や転倒が起こりうるヒヤリハット事例を紹介します。
「すべり台の階段で子どもが押し合いになり、落ちそうなった」
「うんていを握った手を離して落ちそうになった」
「鬼ごっこの最中に前を見ずに走って他の子とぶつかりそうになった」
「靴紐がほどけてしまい、紐をふんで転倒しそうになった」
重大な事故に発展しないよう、ひとつひとつの遊具でどのようなヒヤリハットが起こりえるのか保育士さん同士で確認し、注意深く見守ることも大切になります。
また、先述の通り、保育施設における事故の中で「骨折」が最も多いことが報告されています。その際に転落や転倒が原因の可能性もあるでしょう。
このようなデータも園内で共有して、安全な環境を作り上げるためにどのような対策が必要なのか話し合うことも重要です。
子どもが何かに夢中になるあまり他の子とぶつかったり、身体が物にぶつかりそうになったりすることも少なくありません。
衝突に関するヒヤリハット事例を紹介します。
「製作活動を行っていたときに隣の子との間隔が狭く、身体がぶつかりそうになった」
「前を見ずに鬼ごっこをしていたときに遊具にぶつかりそうになった」
「給食準備中に子ども同士が言い合いになって棚に頭をぶつけそうになった」
はさみなど危険なアイテムの使用中に子ども同士がぶつかってしまった場合は、大きなケガを負う可能性もあるでしょう。そういった状況に陥らないよう、環境を整え、定期的に子どもと約束事を確認することも大切ですね。
個人差があるものの、0歳〜2歳半頃までの子どもはなんでも口に入れてしまい、誤飲を招く可能性があるでしょう。
誤飲に関するヒヤリハット事例を紹介します。
「おもちゃの部品がとれて口に入れそうになった」
「床に落ちていたティッシュやゴミを口に入れてしまいそうになった」
「製作活動で使ったテープを口に入れそうになった」
保育士さんは常に床に物が落ちていないか注意する必要があります。子どもたちの行動を予測して定期的に清掃し、環境を整えることも大切でしょう。
おもちゃの部品を口に入れることのないよう、壊れたり、欠けたりしていないか点検することも重要ですね。
食物アレルギーによる事故は、子どもたちの命に関わる大変危険なものです。該当の食べ物を口だけでなく、目や鼻から入れてしまったり、手で触れたりした場合も発症してしまう可能性もあるでしょう。
食物アレルギーに関するヒヤリハット事例を紹介します。
「アレルギーをもった子どもにまちがってその食物を配りそうになった」
「クッキングの最中にアレルギーのある材料を触った手を口に入れそうになった」
「小麦粉アレルギーの子が小麦粉粘土で遊びそうになった」
保育士さん同士で連携を図るためにも担当の子どもだけでなく、園児全体のアレルギー情報を共有することが大切になります。
ご家庭の中には、食物アレルギーの克服に向けて少しずつ該当の食べ物を食べているケースもあるようです。そのため、保護者の方と状況や対応方法などを共有することも必要ですね。
睡眠中に重大な事故に発展する場合もあるかもしれません。起こりえるヒヤリハット事例を紹介します。
「午睡の時間に顔にタオルがかかりそうになった」
「預かり保育中に寝てしまい、横向きからうつぶせに姿勢を変えそうになった」
「睡眠中、鼻が詰まって息がしづらそうだった」
少し風邪気味の子などは体調の変化などに敏感になり、睡眠中の様子を定期的に見ることも大切です。
寝相の悪い子もいれば、うつぶせ寝を好む子もいるかもしれません。その子の特性を把握して、安全に寝ることができるようにチェック・記録していきましょう。
給食の配膳時やクッキング活動中などにやけどをしてしまうこともあるかもしれません。
やけどを負う可能性があるヒヤリハット事例を紹介します。
「みそ汁が入った熱い鍋を手でさわりそうになった」
「ストーブの熱い金属部分に足がぶつかりそうになった」
「クッキング中にフライパンから油がはねて顔にあたりそうになった」
子どもたちがやけどを負わないよう、環境を整えていきましょう。また、事前に約束事を確認して危険がないように細心の注意を払う必要があります。
プール遊びやどろんこ遊びなど水を使った遊びは子どもたちに人気がありそうですね。ただ、夢中になるあまり重大な事故に発展する可能性もあるでしょう。
水の事故が起こりうるヒヤリハット事例を紹介します。
「プールの中で足をすべらせて溺れそうになった」
「子ども同士で水をかけ合い、たくさんの水を飲みそうになった」
「どろんこ遊びで水と泥が目に入りそうになった」
保育士さんが目を離したすきに溺れそうになったり、たくさんの水を飲みそうになったりとプール遊び中はさまざまな危険が潜んでいることでしょう。
見守る職員の配置人数を増やすなど、子どもたちが安心して遊べるように環境を整えることも大切ですね。
園の周りを散歩したり、公園に遊びに行ったり、園外活動中に事故が起こる可能性もあるかもしれません。
園外活動中に起こりうるヒヤリハット事例を紹介します。
「散歩の最中に子どもたちが手を引っ張り合って転びそうになった」
「公園にあるゴミを使って遊びそうになった」
「鬼ごっこに夢中になって公園から出ていきそうになった」
園外活動で開放的な気分になり、約束事を守れない子どももいるかもしれません。なぜ約束事が必要なのか、守らなかったらどうなってしまうのかもきちんと話したうえで事故を防ぐ必要があるでしょう。
また、公園にゴミや大きな石などが落ちていないか確認することも大切です。子どもたちが安全な環境の中で遊べるように配慮していきましょう。
子どもたちを見守る中で園内に不審者が侵入したり、尋ねてきたりと危険な状況となる場合もあるかもしれません。
保育活動中に不審者が子どもたちに近寄ってきた場合のヒヤリハット例を紹介します。
「公園遊び中に知らないおじさんに話しかけられそうになった」
「保育施設の関係者以外の人が何度も園の周りを歩いていた」
「園の呼び鈴を何度も鳴らしている不審者がいた」
子どもの送迎時は保育施設の玄関を開けっぱなしにしている園もあるかもしれません。
不審者の侵入を防ぐ安全対策が必要になる一方で、子どもたちに「知らない人についていかない」「知らない人に話しかけられたらすぐに先生を呼ぶ」といった約束事を定期的に伝えることも重要です。
上記以外にも園生活を送る中で起こりえるヒヤリハット事例を紹介します。
「窓のブラインド部分の紐が首にかかりそうになった」
「公園に落ちていたどんぐりを食べそうになった」
「製作で使った色水を飲みそうになった」
「ビニール袋をかぶりそうになった」
子どもたちはいろいろなものに興味や関心をもつことで、予想外の行動を取るケースもあるでしょう。保育士さんは事前に危険を察知して事故が起こらないように環境を整えたり、約束事を確認したりすることが大切になります。
保育計画の作成時にはひとつひとつの活動にどのようなヒヤリハットが潜んでいるのかを常に考え、対策を練ることも重要ですね。
出典:保育所におけるリスク・マネジメントヒヤリハット/傷害/発症事例報告書/厚生労働省
各保育施設で園の設備や園児数や職員数、活動内容にも違いがあることでしょう。園の実情にあわせたヒヤリハット対策を立てることが大切です。
最後に対策方法の立て方について詳しく解説します。
まず、保育士さんが「ヒヤッとしたこと」「ハッとしたこと」があった場合に報告できる環境を作り上げましょう。
風通しの悪い職場では気づいたことを報告したとしても「なぜそのときにもっと注意深く子どもを見ることができなかったんだ」とその保育士さんが叱責される場合もあるようです。
そういった職場環境では全体で危険察知できないまま、重大な事故が起こりうる可能性もあります。
まずは保育士さん同士がヒヤリハットの事例を共有し、子どもたちの安全を守る体制を構築していきましょう。
また、子どもの特性を十分に理解したうえで、「事故に発展する可能性がある場所の把握」「点検が必要な項目の洗い出し」を行うことも必要になります。
定期的にミーティングを開いて、保育士さん同士が事例や報告書をもとに意見交換できる場を設けていきましょう。
子どもが遊びに夢中になったり、さまざまなことにチャレンジしたりする中でケガや事故に発展する場合もあるでしょう。
そういったケースを防ぐためには子どもたちの協力も必要です。
公園に行く前には「知らない人についていかない」「友だちを押さない」「順番を守る」など繰り返し約束事の確認をするとよいでしょう。
子ども同士で「危ないよ」「気をつけようね」と言い合える環境を作り上げることも大切ですね。
約束事がわかりやすく伝えられるようにクイズ形式にしたり、紙芝居を作ったりと工夫してみるとよいかもしれません。
ヒヤリハット対策と同時に重大な事故が生じてしまった場合の対応方法を園全体で共有しておくことも大切です。
内閣府の「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」の資料によれば、「緊急時の役割の明確化」や「医療機関や通報の順番・連絡先リストの作成」を推進しています。
こういった内容を園の実情に合わせてマニュアル化すれば、万が一事故が起きたときにスムーズに行動することができるでしょう。
出典:教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン/厚生労働省
保育のヒヤリハットが起こった場合に「自分がもっとちゃんと見ていれば」「なぜあのときに目を離してしまったのか」と自身の行動を悔いる保育士さんもいるかもしれません。
しかし、子どもたちの行動を全て観察して危険がないように先回りするというのは大変なことでしょう。
保護者の方が1対1で子どもと向き合っていたとしても、転んでけがをしてしまったり、おもちゃを口に入れてしまったりするケースもあるものです。
大切なのはヒヤリハットが起こったとしても重大な事故に発展しないように対策を立てることでしょう。そのためには、風通しのよい職場を作り、保育士さん同士が意見交換できる環境を整えることが重要です。
園全体で子どもたちの安全を見守る「目」を養うことができるよう、ヒヤリハット対策に取り組んでいきましょう。
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