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あなたの園は大丈夫? 保育専門社労士が解説する勤怠・労務管理のポイント ~給与計算編~

あなたの園は大丈夫? 保育専門社労士が解説する勤怠・労務管理のポイント ~給与計算編~ 88studio/Shutterstock.com
保育専門社労士によるコラム、今回は給与計算編です。
給与計算がしっかりできている園は当然ながらトラブルも少なく、職員の信頼と定着につながります。ただし、職員にとって納得感のある給与計算をするには、実はとても手間がかかります。どのような点に注意し、いかに効率的に運用を変えていくか、という点に着目して解説します。

目次

    効率化すべきところと時間をかけるところを整理しよう

    ICT化と聞くと、ボタン一つで簡単に処理ができるようになり、大幅な時間短縮をしながら作業効率が実現する、というイメージがあるかと思います。もちろん、勤怠システムを入れると作業がとても便利になります(後述)が、その前に、今のやり方が正しいのか、今一度見直す必要があるのも事実です。
     たとえば月給の正職員は出勤簿に印鑑を押すだけ、交通費は1か月の定期代、というような園。残業をしていたとしても計算せず、月給と定期代を給与明細に載せるだけなので給与計算の手間がほとんどありません。一見、時間がかかっていないように見えますが、そもそも残業の計算も勤怠の確認もしていないので誤った処理をしていることになります。正しく計算しようとするには、

    1. タイムカードに打刻漏れがないかを確認する。
    2. 1か月の所定労働日数=実際の出勤日数+有休+欠勤日数となっているか確認し、ズレがある場合は欠勤控除や割増賃金を計算する。
    3. シフトと実際の勤務にずれがないかを確認し、間違いが認められる場合は修正する。
    4. 残業、休日出勤、振休を確認し、それぞれの時間を計算する。
    5. 休憩が記録されているかを確認し、労働時間から差し引く。
    6. 変更事項がないか確認する。(40歳の介護保険料、社会保険の月額変更、給与改定、中途入退職、産育休など)

    これ以外にも「日によって電車と自転車通勤を使い分けている」「給食代の控除が出勤日数に応じて変わる」など、細かい確認と計算が必要になる場合もあります。
     給与計算は本来、とても手間のかかる作業で、これまで正しく時間計算を行っていなかった場合には、効率化をするために勤怠管理システムを入れようと思ったのに余計に手間が増えるのでは?と思われるかもしれません。しかしながら、この前提の見直しをしっかりした上で勤怠管理をするようになると、職員一人一人が納得できる正しい給与計算ができるようになりますし、システムを入れることで効率的にチェックできることもたくさんあるのです。

    勤怠システムを活用して給与計算を効率化しよう

    今まで残業計算などを行わずに紙の管理が中心だった園は最初の準備に苦労されるかもしれませんが、勤怠管理システムを導入することで手間を省きながら正しい処理に移行していくことができます。
     たとえば、急な予定変更でシフトをチェンジしたり、遅刻早退があったとき、本人の申告や管理者の記憶をたどって確認するのでは必ずミスが起こりますが、勤怠管理システムにシフトとの整合性をチェックする機能があれば変更点に確実に気づくことができます。また、変形労働時間制も複雑な勤務シフトが組まれると、どこが通常の時間帯でどこが残業なのかが分かりづらく、一人一人を目視で確認すると大変な作業になってしまいますが、システムで残業計算をかければ一瞬で集計できます。このように、正しい処理をしながら、その手間をできるだけ効率化していくという意識が大切です。
     そして、集計した勤怠データは、給与計算システムに吸い上げて自動計算することもできます。確定した数字を一人一人給与計算システムに手打ちすると、そこでまたミスが発生しますし、入力する時間も要しますが、最近の勤怠管理システム・給与計算システムはほとんどがデータ取り込みができるようになっていますので、ミスなく一瞬で給与計算ができるようになります。

     

    給与計算が明瞭であれば園の信頼につながる

    勤怠管理システムは「正しく打刻ができて、1か月の勤務時間の集計に便利」というだけでなく、本来、管理者が一人ずつ日々の勤怠を確認しなければならない作業を自動的にチェックできたり、遅刻・早退の回数を見ることで勤務態度を把握できたり、残業時間のばらつきを検証したり、職員の状況を正しく知るためのツールにもなります。
     もちろん、残業計算などを一切してこなかったときに比べたら作業工程が増えるので、負担に感じることも多いかもしれませんが、職員ひとりひとりが気持ちよく働くことができるようにするためには、正しい勤怠管理と正しい給与計算をしていくことは必須です。不透明な労務管理がトラブルにつながり、職員の不信感や離職が繰り返されると、それは保育の質の低下を招いてしまいます。
     これからますます多様な働き方が増えていく中で、計算ルールを確立し、それらをミスなく効率的に処理していく方法を考えながら、よりよい職場環境を目指していきましょう。

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    執筆者

    菊池加奈子さん

    全国の保育施設の労務管理、処遇改善等加算に関するコンサルティング、給与計算を展開。著書「保育園の労務管理・処遇改善等加算・キャリアパスの実務」。(一社)全企保連アドバイザリーボードメンバー。プライベートでは高校生から1歳児まで、6児の母。

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