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あなたの園は大丈夫? 保育専門社労士が解説する勤怠・労務管理のポイント ~有休管理編~
目次
有休は本来、本人が希望した時期に自由に取れるものです。取得の理由を確認したり、理由によって取得を制限するということは認められるものではないため、もしも誤って運用してしまっている場合にはフローを見直す必要があります。一方で、保育園側にも事情がありますから、休まれてしまうと運営に支障が出てしまうようなどうしようもない状況であれば別の日に取ってもらうよう打診することができます。これを「時季変更権」と言います。当然、職員も子どもの入学式や運動会といった、予定の変更が効かないような場合もあるので、当然に時季変更できてしまうわけではなく、やむを得ない状況に限られます。そして、できるだけ職員の希望を受け入れながら調整していくことが必要です。
そしてもう一つ重要なのが、有休を取ることができる大前提として「労働日であること」が挙げられます。正職員であれば、月の所定労働日数が決まっており、出勤日数と有休日数の合計が月の所定労働日数に収まるように取得しなければなりません。有休が余っているからといって、日曜日などの公休日を有休にしてしまうと、法定の休日や労働時間が崩れることになりますし、給料の面で見ても月給をオーバーしてしまうことにもなりかねません。
パートも同様です。パートであれば個別の雇用契約の中で週の勤務日数が決まっており、それを超えて有休を取ることはできません。もし、シフトで調整していることによって週の勤務日数が定まっていないという場合であっても、これまでの実績から見て日数を算出するようにしましょう。
パートの有休については、「比例付与」といって、フルタイム正職員の付与日数に比例して日数を計算します。契約上の週の勤務日数、もしくは過去 1年の勤務日数の合計を下記の表に当てはめて確認することができます。
日数については週ごとにバラバラであっても、年間の勤務実績に応じて付与日数を割り出すことができます。注意が必要なのが、1日の勤務時間もバラバラである場合です。
原則は、有休を取ろうとしている日のシフトで決められた時間分の有休が付与されることになります。そうすると、8時間の日もあれば3時間の日もあり、有休を希望した日によって金額が変わることになります。また、シフトを決めてから有休を申請されると再調整に手間がかかるため、できるだけシフトを組む前に休みの希望を教えてほしいと伝えている園もあるでしょう。そうなると、1日の勤務時間すら決まっていないことになってしまいます。こうした混乱を避けるため、計算方法は就業規則で定めておくようにしましょう。
法律上、有給休暇の計算方法は以下の方法から選択することができます。
短時間のパート勤務の職員には はあまりなじまないため、今回は①と②で考えます①は名前の通り、通常支払われるべき賃金のため、雇用契約もしくはシフトであらかじめ決められた時間分の給与を払うということになりますが、② は平均を取るため、
いずれか高い方で算出することができます。
平均賃金は、たとえ週の勤務日数・時間がバラバラであっても1日分の平均値が出せるため、公平性があって分かりやすいルールといえます。ただし、法律どおりだと平均値の6割ということで実際よりも金額が少なくなってしまうので、平均値を算出したうえで6割に減らさずに支給するということでも問題ありません。
有休は柔軟に取得できるようになってきており、園によっては半休だけでなく時間単位で取得することが認められている場合もあります。出勤前に病院に行くとか、子どもの授業参観で数時間だけ休みを取るといったことが可能になり、両立支援の観点からも大変ありがたい制度であるといえます。ただし、シフトの都合上、もしくは緊急対応等によって、予定よりも長い時間働いてしまい、結果として1日8時間の法定労働時間を超えてしまったとき、割増賃金についてはどのように考えればよいでしょうか?
上記のように、割増賃金を払わなければならないのは、有休を除いた実際の勤務が8時間を超えたときです。有休と合わせて8時間を超えたとしても、実際の勤務が8時間以内であれば割増残業扱いにはならないことになります。
有休休暇が取りやすい園を目指していきたいものですが、一方で有休の管理や計算はとても煩雑です。紙で申請・管理していると付け忘れが生じますし、毎回計算するのも大変な負担になります。パートが多く、勤務時間・日数もバラバラになりがちな職員の有休管理はできるだけシステム化を目指しましょう。付与日数と残日数の管理ができ、給与計算にも反映しやすいものを活用していくことで事務負担が大幅に削減されますし、職員もいつでも自分の有休残日数を確認できることで安心感につながります。
全国の保育施設の労務管理、処遇改善等加算に関するコンサルティング、給与計算を展開。著書「保育園の労務管理・処遇改善等加算・キャリアパスの実務」。(一社)全企保連アドバイザリーボードメンバー。プライベートでは高校生から1歳児まで、6児の母。
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