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あなたの園は大丈夫?保育専門社労士が解説する勤怠・労務管理のポイント 

あなたの園は大丈夫?保育専門社労士が解説する勤怠・労務管理のポイント  milatas/Shutterstock.com
このコラムでは保育施設における労務管理でよくあがる疑問やノウハウを解説していきます。今回は、タイムカードや変動労働制に関する勤怠管理についてです。正しい労務知識を身に着けて、保育士さんが働きやすい環境を作るとともに、事務業務の負担の軽減に役立てていきましょう。

目次

    1.タイムカードは1分単位で打刻しなければいけないの?

    給料を計算するとき、原則は1分単位で計算する必要があります。労働基準法第24条では、「賃金は全額を支払わなければならない」と定められており、もし15分単位切り捨てで計算されていたら、切り捨てられた部分についての給料が支払われていない=未払い賃金ということになるからです。

    では今後はタイムカードを1分単位に打刻して、記録どおり1分残らず給料を計算することを徹底すればよいのか、というと、そういうわけでもないのです。

    法律で定められているのは「1分単位に給料を計算しなさい」ということであって、「タイムカードを1分単位で打刻しなさい」と言っているわけではないのです。

    「仕事の前後にちょっと雑談することもある」
    「タイムカードの場所が保育士室から離れている。タイムカードが置いてある事務室が近いクラスの先生と遠い先生では不公平が生じる」
    「そもそも、どのタイミングが始業・終業時間か分からない」

     

    このように、実際の仕事の流れをイメージすると、さまざまな事情があり、タイムカードの打刻時間が正確な勤務時間といえない場合があります。

    しかし、だからといって15分や30分単位に切り捨ての処理をしてよいのではなく、正確な勤務時間を記録する方法とルールを決めること、その上で1分単位の記録ができるようにしていくことが重要なのです。

    • 上司(園長や主任)が現認(その場で確認)すること
    • 始業・終業はどのような状態のときを指すのか、具体的にルールを定めること

    こうしたルールを園ごとに定め、勤怠管理のシステムをしっかり導入すれば1分単位で正確な勤務時間を記録することが可能になります。

    変形労働時間制、1年と1ヶ月、どちらがフィットする?

    保育園はシフト勤務なので、変形労働時間制を採っている施設がほとんどですが、施設によって「1か月単位の変形労働時間制」と「1年単位の変形労働時間制」とそれぞれです。何がどう違って、自分の園はどちらがあっているのか、ご存知ですか?

    ①1か月単位の変形労働時間制

    1か月の中で週平均40時間になるよう日々の時間を調整することができます。たとえば、通常であれば1日8時間・週40時間を超えると割増賃金を払う必要があるため、月曜日から金曜日まで毎日8時間勤務して土曜保育もシフトに入ったとすると、土曜日の勤務は終日残業となり、2割5分の残業代が発生します。しかし、1か月単位の変形労働時間制を使うと、その週は48時間勤務であったとしても翌週を4日勤務にして調整したり、1日の勤務時間を6~7時間程度に短くして6連勤しても週40時間に収めるようにするといったことが可能になります。

    変形労働制

    ①通常の労働時間制の場合

    土曜出勤によって週48時間となると8時間分は割増賃金

    ②1か月単位の変形労働時間制の場合

    翌週に休みを入れており、平均すると週40時間に収まるので割増賃金は不要

     

    そして、1か月単位の変形労働時間制の注意点は、シフトを組む段階における1か月の労働時間の上限が決まっていることです。

    変形労働制

    たとえば、30日の月に1日8時間の勤務で22日分のシフトを組むと、176時間になり、上限をオーバーしてしまいます。あくまでも予定することができないのであって、1時間も残業ができないということではありません。

    ②1年単位の変形労働時間制

    1年を通して週平均40時間以内になるよう調整できるのが1年単位の変形労働時間制です。季節を通して繁閑の差がある場合に、1日7時間の月と1日9時間の月というように期間ごとに1日の勤務時間を変えることもできます。

     

    また、1日8時間の勤務時間とするには年間休日は105日以上なければなりませんが、1日の労働時間を8時間よりも少なくすることによって週平均40時間以内に収めて、105日未満の休日数に設定するといったことが可能になります。

    それぞれの特性を踏まえて変形労働時間制を採用するとよいでしょう。注意すべき点は、1か月単位であっても1年単位であっても、シフトを組む際にあらかじめ勤務時間を決めておかなければならないということです。たまたま残業してしまったので別の日で調整をするといったことは認められません。

    1日8時間を超えていなくても残業になる?

    通常は1日8時間・週40時間を超えた部分が残業となりますが、変形労働時間制の場合は、その日に決めた時間を超えた部分はすべて残業となります。変形労働時間制ではほかの日や月との調整で6連勤48時間といった勤務や、1日9時間の月、というようなシフトを組むことができますが、あらかじめ決まっているのであれば、その時間帯は残業代を払う必要はありません。逆に、1日4時間としている日や1日7時間と設定している月に、その時間を超えて働いた場合は残業代が発生することになります。

    変形労働時間制は季節の行事や土曜保育の出勤調整など、保育園での勤務形態としては使いやすい制度といえますが、給与計算をする場合、単純にExcelの計算式を組んで1日8時間を超えた時間を残業と自動計算することができず、1日ごとに予定されていたシフトの時間を確認しながら残業時間を確定しなければならないといった手間が生じてしまいます。

    まとめ

    勤怠打刻のルール化を図り、正しい給与計算までできるようになることが労務管理の最大のポイントです。

    ただ勤怠管理システムを導入して、1か月の勤務時間や出勤日の集計が楽にできるようになっても、打刻した時間そのものが誤っていたり、シフトに対応した残業計算などができないと事務負担はなかなか解消されません。シフトに呼応して実際の勤務との差異が確認できるような機能があると確認も取りやすいですし、給与計算もスムーズに行うことができます。システムの機能をうまく活用して、正しい勤怠管理とスムーズな給与計算を目指しましょう。

     

    執筆者

    菊池加奈子さん

    全国の保育施設の労務管理、処遇改善等加算に関するコンサルティング、給与計算を展開。著書「保育園の労務管理・処遇改善等加算・キャリアパスの実務」。(一社)全企保連アドバイザリーボードメンバー。プライベートでは高校生から1歳児まで、6児の母。

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