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【社労士監修】ここだけは押さえよう!保育業界における変形労働時間制!
目次
変形労働時間制は「一日8時間」「週40時間」という労働基準法で決められた法定労働時間を柔軟に調整することができる制度です。
事務仕事のように「9時~17時」「9時~18時」など一斉に勤務時間が決まっている業種は、変形労働時間制を導入する必要はありません。
しかし、保育園のように「開所時間が長い」「月曜日から土曜日又は日曜日まで開所している」といった場合、「一日8時間」「週40時間」という通常の勤務体制だと、職員のシフトが組みづらいでしょう。
変形労働時間制を導入することで園の実情に合わせて、勤務時間の調整や管理ができるようになります。
また、シフトを自由に組むことが変形労働時間制という訳ではありません。
シフト制であっても、変形労働時間制の協定を結んでいない場合は通常の法定労働時間である「一日8時間」「週40時間」という枠をきちんと守った中でシフトを組まなければいけません。
シフト制=変形労働時間制ではありませんので、就業規則や労使協定の締結内容をきちんと確認することが大切です。
変形労働時間制には「1カ月単位」と「1年単位」で勤務調整を行う方法があります。それぞれの概要について詳しく見ていきましょう。
1カ月単位の変形労働時間制は、「1カ月以内の労働時間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間以内」となるよう、労働日や労働時間の調整が可能な制度です。
運用時の注意点を見ていきましょう。
1カ月単位の変形労働時間制を導入する際は、1年から3年ごとに労基署への労使協定の届け出または就業規則(1回限り)への記載が必要です。1年単位の変形労働時間制の際は必ず労基署へ届け出が必要になる一方、1カ月単位の変形時間制については就業規則への記載でもよいとされています。
また、就業規則への記載のみの場合は「1カ月単位の変形労働時間制を適用する」などと簡潔に記入するのではなく、労使協定に定める情報もきちんと載せておく必要があります。
1カ月単位の変形労働時間制の月の上限労働時間数は以下の通りです。
月の労働時間数が上限を超えないよう、週平均40時間以内を意識してシフトを組む必要があります。
例えば、一日8時間勤務の場合、30日の月は21日が上限となります。
上限労働時間数を超えた場合は「割増賃金(残業代)」が発生するため、上手に調整することが大切です。
1カ月単位の変形労働時間制の最大のメリットは
✅ルールを守ったうえで週40時間を超える勤務調整が可能となる
✅割増賃金の抑制、残業時間の削減つながる
という点です。
先述述べた通り、1カ月単位の変形労働時間制は労働時間の上限が決まっていますが、ルールを守ったうえで週40時間以上の勤務も可能となります。
また、勤務調整が可能となることで割増賃金の抑制につながります。
例えば、通常の労働時間制度では「一日8時間」「週40時間」を超えた時間外の割増賃金について考えてみましょう。
土曜日開所する園の場合、月曜日〜土曜日まで週6日×8時間=48時間のシフトを作成するケースがあるでしょう。
土曜日または週6日目については、丸一日残業扱いになり、割増賃金の対象になってしまいます。すでに40時間を超えてしまっているため、朝から夕方まで1.25倍の時給を払わなければなりません。
上記のように1カ月単位の変形労働時間制を活用すれば、他の週で調整することで週6連勤が可能となり、残業代を抑えて業務調整ができます。1カ月のうち6連勤を通常のシフトに組み込むことができるというのは、大きなメリットですよね。
次に1カ月単位の変形労働時間制のシフトの作成方法を見ていきましょう。
1カ月単位の変形労働時間制を導入すれば、以下のように柔軟にシフトを組むことが可能です。
例えば、「火曜日は人手が足りないので朝から夕方まで10時間入ってくださいね。その代わり水曜日は6時間のシフトを組みます。」という風に40時間に収まるようにシフトを組むことができます。
通常の労働時間制の場合、10時間働いたら2時間分の割増賃金を支給しなければなりません。変形労働時間制を活用すれば上記のような調整が可能なため、残業代の削減につながりますし、職員にとっても効率よく働くことができるようになります。
また、以下のように週40時間越えのシフト作成も可能となり「6連勤後の翌週は週4日の勤務」というように、週をまたいだ調整もできます。
保育園では土曜日開所する場合も多く、職員に「月曜日~土曜日まで週6日×8時間=48時間の勤務」をお願いしたい園もあるでしょう。他の週と調整ができることでシフトが組みやすくなります。
また、一週間平均40時間内に労働時間数を収めることができれば「週5の10時間勤務後、翌週は週5の6時間勤務」といったシフト作成も可能となりますね。
1年単位の変形労働時間制とは、業務に繁閑のある事業において「1カ月を超えた1年以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間以内」となるよう、労働日や労働時間の調整ができる制度です。
運用時の注意点を見ていきましょう。
1年単位の変形労働時間制の導入の際は労基署へ届け出が必要になります。
1カ月単位の変形労働時間制は就業規則のみの記載でもよいですが、1年単位の変形労働時間制は労務所への届け出が必須となるため、この点に注意が必要です。
1年単位の変形労働時間制の条件は以下の通りです。
保育園の繁忙期・閑散期に合わせて労働時間数や日数を調整していきましょう。
7次締切分:2024年10月8日 (火) → 交付決定日:2024年11月22日(金) 予定
追加公募対象枠:通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型)、インボイス枠(電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠、複数社連携IT導入枠
※確定している募集回のスケジュールになります。以降のスケジュールは随時更新いたします。
※一般的に公募が遅くなるにつれて、通過(採択)率が下がるとされているため、お早めの申請をおすすめしております。
※手続きに時間がかかるため、締切は弊社ヘルプデスクの受付締切日を記載しております。
1年単位の変形労働時間制を導入する最大のメリットは
✅年間の繁忙期・閑散期に合わせて勤務調整ができる
✅1カ月の出勤日数の上限がないことから調整しやすい
✅割増賃金の抑制、残業時間の削減につながる
という点です。
保育園では12月は発表会、3月は卒園式や進級準備などがあり、その期間は忙しい時期ですよね。
一方、5月のGW、8月は夏休み期間、行事の合間の11月頃は閑散期となる園も多いかもしれません。
変形労働時間制を活用すれば、この繁忙期・閑散期に合わせて勤務調整ができます。
例えば繁忙期の忙しい月は一日8.5時間で働いてもらい、少し余裕のあるときは一日7.5時間の勤務体制とするなど、労働時間を変動させることが可能です。1カ月単位の変形労働時間制のように日ごとの時間調整もできます。
1年単位の変形労働時間制は週1日もしくは4週4日の法定休日を確保すれば1カ月の出勤日数を増減できることから、月ごとに25日または18日勤務といった勤務日数の調整も可能ですね。
<1年単位の変形労働時間制を導入する際には注意点も…>
1年単位の変形労働時間制は年間の繁閑期に合わせて勤務調整を行いますが、学年によって繁閑差がないケースもあるでしょう。
例えば、0歳児・1歳児・2歳児クラスでは、運動会や発表会など前に事前練習が多いということはあまりないかもしれません。一方、3歳児以上のクラスは練習や準備の時間が多く、担任が多忙となる場合が考えられます。
このような状況の中で「3歳児以上のクラス担任のみに変形労働時間制を設定する」など対象を絞ったうえで実施してしまうと、次に3歳児クラス担任が1歳児クラスを持つ場合に、体制を組み直す必要が生じます。
そのため、変形労働時間制を設定するときは園全体で統一したほうがよいでしょう。
1年単位の変形労働時間制の勤務調整について見ていきましょう。
まず、繁閑期に合わせた業務調整の方法を紹介します。
下記の表の所定労働日数を見ると6月や3月は勤務日数が多く、通常の勤務体制では2・3日分ほどは残業となり、割増賃金が発生する可能性があります。
また、1カ月の変形労働時間制を活用しても、23日働くと規定の労働時間の上限時間を超えてしまいます。
1年単位の変形労働時間制を導入すれば、5月や8月、1月など勤務日数が少ない時期と調整することが可能です。6連勤が3回ある月も出勤日数が少ない月と調整ができるため、割り増し賃金を払う必要もなくなります。
また、月の勤務日数に関してもシフトのグループごとに月の所定労働日数を変えることもできます。
1年単位の変形労働時間制は一年を通して週40時間とするのではなく、3カ月、4カ月、半年ごとなどと期間を区切って勤務日数を調整することができます。
上記のように大規模な園で職員全員の働き方の統一が難しい場合は、Aシフト、Bシフト、Cシフトで出勤日数を変えながら、3カ月で同じ日数に調整することもできます。
1カ月単位、1年単位の労働制はさまざまな利用方法がありますので、それぞれの園の実情に合った変形労働時間制を採用するとよいでしょう。
1カ月単位と1年単位の変形労働時間制のどちらを導入すればよいのか迷うこともあるのではないでしょうか。
それぞれに向いている園の特徴を解説します。
繁閑の差があまりなく、職員一人ひとりの総労働時間が30日の月に171時間、31日の月に178時間以内におさめることができる場合は1カ月単位の変形労働時間制を取り入れるとよいでしょう。
小規模保育で週6~7日開所する園もまた1カ月単位の変形労働時間制を導入するとよさそうです。
小規模園の多くは0歳児・1歳児・2歳児のクラスで複数担任制が取り入れられています。その際、誰かが平日に休んでも代わりの先生がいるため、あまり影響は少ないことから1カ月間の中で勤務調整がしやすいでしょう。
週休3日制を実現したい園も1カ月単位の変形労働時間制に向いています。
「一日10時間で週4日」という勤務体制であれば「金土日の3日間」はお休みが可能となります。
保育士さんも身体を休めることができ、プライベートも充実しそうです。
こちらの勤務体制はとても増えていますが「一日10時間働かなければいけない」ということで辛い、きついという保育士さんもいるので、その点に注意が必要ですね。
年間で繁閑の差が大きい園は1年単位の変形労働時間制を用いた勤務調整に向いています。
例えば「ゴールデンウィークの開園日数が少ない」「夏休みがある」園などです。
1号認定のご家庭が多い幼稚園型の認定子ども園の場合は「夏休み全てお休みになる」というケースもあります。(※1号認定:3歳児以上・教育標準時間以内)
卒園式や発表会の月など忙しくなる繁忙期と閑散期に合わせて勤務調整することができますね。
幼児クラスの場合は一人担任制の園も多いものです。そのため、もし担任の先生がいなかったらクラスの運営に支障が生じる場合もあるでしょう。
その際、1カ月の変形労働時間制を導入しても勤務調整が難しいため、年間を通して労働日数や時間を調整できる1年単位の変形労働時間制を活用するとよさそうです。
職員によって月の休日数に違いがある園や職員の勤務日数の統一が難しい園もまた、1年単位の変形労働時間制を活用することで調整しやすくなるため、導入を検討してみましょう。
続いて変形労働時間制の導入後の給与計算について紹介します。
複雑な管理が必要となるため、「給与計算が正しくできているか」「しっかり残業の計算ができているか」きちんと確認しなければなりません。通常の労働時間制の中で間違えがちな給与計算の方法も合わせて紹介します。
所定労働時間が「8時間×21日=168時間」「総労働時間が181時間」の場合の保育事業所を例にして考えてみましょう。
※以下の②と共に同じ月、パターンで残業時間を算出。総労働時間181時間とした場合の残業時間は23.5時間
通常の労働時間制を適用した場合に、1日は1日8時間の労働時間を超えているため、残業代を支払う必要があります。
また、7日・9日のように保育園では「子どもが早く帰ったので勤務を終了します」「土曜保育の日に8時間勤務の予定でしたが保護者の方のお迎えが早かったため、早めに勤務が終わりました。」ということもあるでしょう。
他の日に残業がある中で早退しているため、残業代と相殺して給与を調整すればよいと考えることもありますよね。しかし、こちらはあくまでも「早退の控除」となり、基本給から早退した時間分の賃金を差し引くので、残業代を調整することはできません。
1日ごと・1週間で勤務日数・時間を見なければならないので早退したからといって、他の日と調整することはできません。
※①と共に同じ月、パターンで残業時間を算出。総労働時間181時間とした場合の残業時間は17.5時間
まず、1カ月単位の変形労働時間制というのは、勤務が始まる前までに必ずシフトを組まなければなりません。
変形労働時間制を活用する場合、事前に「予定労働時間」として決めたシフトが給与計算に大きく影響します。そのため、作成したシフトは固定となります。
例えば、1日のように「勤務時間の予定が10時間だったが子どもが早く帰ったため、9時間で帰りました。」と言ったケースに早めに帰ったとしても、その1時間を他の残業調整などにあてることはできません。
また、4日~9日まで「6連勤」、7・5日のように「8時間満たない」など勤務時間がバラバラな場合は計算方法に注意が必要です。「予定していた勤務時間」と「実際の就業時間」を比較し、8時間越えの予定日なのか、8時間未満の日なのかを日ごとに確認していきます。
6日のように「勤務時間の予定が2時間だったが実際には8時間勤務になった」といった場合は予定よりも6時間残業したこととなり、割増賃金は6時間分となります。
とはいえ、上記の①と同様の総労働時間と同じパターンでも残業時間は17.5時間。
①は残業時間が23.5時間なので5時間の残業時間・残業代の削減となります。
このように上手に調整すれば、長時間勤務や6連勤といった勤務体制を予定していても、残業時間の削減につながります。
<例:変形労働時間制の導入後、間違って計算した場合>
変形労働時間制の導入後、ありがちな間違いについて紹介します。
管理が複雑になり、細かなチェックなどをせずに以下のような間違った計算をしてしまう可能性があります。単純に総労働時間から所定労働時間を引いてしまう方法です。
✕ 181時間(総労働時間)―168時間(所定労働時間)=13時間(残業時間)
①・②のパターンよりも残業時間は減っていますが実状と異なるため、未払いの残業代が発生してしまいます。
職員から「残業代の支給内容がおかしいのでは?」と指摘される場合もあるでしょう。
このような状況にならないためにも、変形労働時間制を活用する際は事前にしっかりしたルールを決めて、正しく運用する必要があります。
整合性を意識したうえで運用し、わからない部分は社労士などの専門家に尋ねましょう。
変形労働時間制は保育園にとって必要な仕組みですが、一方で以下のように複雑な手順が必要になります。
特に給与計算を手入力で行うと、一人ひとりのシフトに合わせて残業時間を算出しないといけないため、桁や数字を間違えるなどミスが発生する可能性もあります。また、手入力は膨大な時間がかかってしまいますね。
ミス防止や業務の削減のためにもICT化を進めていきましょう。
<変形労働時間制の活用するICTシステムの選ぶポイント>
以下の条件を満たす、労務管理に特化したシステムを選ぶことが大切です。
一般的な保育施設に導入するシステムは、保育記録計画や連絡帳機能に力を入れているものが多くあります。上記のような条件に対応可能なシステムを選び、給与計算やシフト作成がしやすいものを使用するとよいですね。
また、労務に特化したICTシステムを活用すると、職員一人ひとりの勤務状況の可視化にもつながります。職員の様子のチェックや健康管理なども行い、働きやすい環境を作りあげていきましょう。
変形労働時間制は単に残業代を削減するだけではなく、柔軟な勤務形態を確立することで多様な人材を活かすことができるというメリットがあります。
ときには職員から「親の介護が必要になった」「学校に行きたい」といった理由で勤務調整の申し出があるケースも考えられます。
その際「正職員は朝から夕方までどんな日でも働けなければいけない」といった勤務体制では勤務の継続は臨めないかもしれません。
変形労働時間制を導入し、上手に労務管理を行いながら柔軟な勤務形態を保証することが大切です。
理想の働き方・よりよい保育の実現に向けて変形労働時間制の活用を考えていきましょう。
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