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あなたの園は大丈夫? 保育専門社労士が解説する勤怠・労務管理のポイント ~シフトと変形労働時間制~
目次
そもそもシフト制とは、早番・中番・遅番など、あらかじめ決められた勤務シフトを組み合わせて異なる時間帯を交代で勤務する働き方をいいます。また、労働契約を結んだ時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など)ごとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような形態のことも含まれます。後者については、職員の希望する時間帯に配置する、いわゆる「希望シフト」が増えていること、職員が足りない時間帯の穴埋め的なシフトをいくつも増やしているといった状況もあり、シフトパターンが複雑になったり、休日や労働時間の考え方があいまいになってしまうこともあります。本来は、シフトパターンによって職員ごとに働く時間帯が異なったとしても、
を基本としています。
シフト制=変形労働時間制と捉えている施設も多いようですが、本来は異なるものです。シフト制はいくつかの決められたパターンをシフト表に割り当てていくものなのに対し、変形労働時間制は労働時間の長さを柔軟に変えながら、一定期間(1か月や1年単位)で週平均40時間になるように調整することが可能で、1日10時間働く日もあれば4時間しか働かないといった日、週50時間勤務といった働き方を設定することができます。そして、シフト勤務は原則として、日ごと・週ごとに法定労働時間を超えた部分について割増賃金を支払わなければならないのに対し、変形労働時間制は1日・1週間の労働時間が8時間・40時間を超えたとしても上限時間に収まっていれば割増賃金を支払う必要がありません。こうした柔軟性が認められていることもあり、変形労働時間制を導入する際には労使協定が必要です。(1か月単位の変形労働時間制の場合には就業規則に定めることによって導入することもできます)
たとえば、土曜日は園児が少なく、午前・午後と休憩なしの交代制で 4時間勤務とし、平日は早番・遅番が不足していることにより10時間勤務の日と組み合わせた1か月単位の変形労働時間制を採るということもできますし、行事が多い月は残業時間・出勤日数を増やして少ない月と調整するといったような、1年単位の変形労働時間制を選択することもできます。
デメリットとしては、導入の際の労使協定の手続きに手間があること、柔軟な労働時間とすることができるとはいえ、総労働時間を合わせなければならないこと、給与計算の際の割増賃金計算に注意が必要になること、職員にとっては「いいように使われている」という印象を持たれてしまうことにより人気がないといったことが挙げられます。
こうしたことから、変形労働時間制を採りながらもいくつかのシフトパターンをつくり、それを組み合わせることにより、変形労働時間制とシフト制を同時に導入することもできます。
ここまで、シフト制とはあらかじめ定められたシフトパターンがある働き方であるという解説をしてきましたが、人手不足の影響もあり、特にパートについては、シフトの段階で当初の契約内容と大きく異なる働き方を強いられたり、休日や労働時間の考え方が示されないといったトラブルがとても増えています。こうした背景もあり、R4年1月に厚生労働省よりいわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項が示されました。その中でシフトの作成や提示方法についてルールに定めておくべきことが記載されています。
新型コロナウィルスの感染拡大の影響も大きい中、いわゆる定時のないシフト制や変形労働時間制は、しっかりとルールを定め、職員に周知しないと働きづらさや職員の不満につながってしまいます。シフトを組む作業はとても労力がいる作業でもありますが、効率的なツールを活用しながら園運営にとっても職員にとってもメリットある体制を整えていきましょう。
全国の保育施設の労務管理、処遇改善等加算に関するコンサルティング、給与計算を展開。著書「保育園の労務管理・処遇改善等加算・キャリアパスの実務」。(一社)全企保連アドバイザリーボードメンバー。プライベートでは高校生から1歳児まで、6児の母。
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