保育指導案とは
保育指導案とは別名「保育計画」「指導計画」と呼ばれ、ねらいや内容を設定し、子どもたちの保育活動を明確化したものです。
主に保育士が年齢にあわせて各園の保育目標、理念に基づいて作成します。
厚生労働省「保育所保育指針」では、指導計画の必要性について以下のように明記しています。
「保育所は、全体的な計画に基づき、具体的な保育が適切に展開されるよう、子どもの生活や発達を見通した長期的な指導計画と、それに関連しながら、より具体的な子どもの日々の生活に即した短期的な指導計画を作成しなければならない」
上記で言及しているように指導案には以下の二つの種類があります。
長期指導案:年間指導案・月案
短期指導案:週案・日案
保育士は4種類の指導案を作成しますが、形式については特に決まりはありません。各園の形式に沿って作成しているところも多いようです。
また、立案する際は手書きまたはタブレットやパソコンなどを活用して指導案を作成します。
出典:保育所保育指針/厚生労働省
保育指導案の内容(ねらい・環境構成・予想される子どもの姿・保育士の援助方法)
保育指導案は各園で形式が異なります。年間指導案→月案→週案→日案の順に、全体的な内容から子どもたちの普段の様子にあわせた細やかな内容を記入していきます。
ここでは項目別の内容について詳しく紹介します。
ねらい
ねらいは活動を通して子どもたちに「どのような能力が育まれるのか」「どんな力が身につくか」といった目標を捉えながら記入する必要があります。
各年齢にあわせて子どもが「できること」「まだ難しくてできないこと」を考えて書くことが大切です。
<例>
- 行事を通して子どもたち同士の交流を深める
- 戸外遊びの中で季節の遊びを楽しむ
環境構成
子どもたちが活動しやすいように、必要な環境構成を記入します。空間の使い方を示し、安全面の配慮したうえで記入しましょう。
<例>
- 事前にホールにサーキットを組み立てスムーズに活動できるように環境設定を行う
- 床に危険物やゴミが落ちていないか確認したうえで活動を行う
予想される子どもの姿
毎日観察している子どもたちの様子から、活動中の動きを予測して記入します。想定される姿を記載すればどのような点でサポートが必要となるのか、事前に対策を立てることができるでしょう。
<例>
- 鬼ごっこのルールに沿って遊ぶ姿がある
- 保護者と離れて保育者に寂しい気持ちを泣いて伝える姿がある
保育士の援助方法
ねらいや子どもの予想される姿を考慮して、適切なサポート方法を考えながら保育士の援助方法を記入していきます。
注意点を記載しておけば、実際にトラブルや想定外の事柄が起こっても対応することができるでしょう。
<例>
- 排泄が上手くできない子がいた場合は「大丈夫だよ、明日またチャレンジしようね。などと伝え、励ます
- 子どもたちが言い合いになった場合は様子を見守り、自分たちで解決できるように配慮する
【テンプレート別】保育指導案の種類や書き方の注意点
ここでは保育指導案の種類別に書き方の留意点を詳しく見ていきましょう。
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年間指導案
年間指導計画案は、4月に主任保育士や各学年のリーダーが作成することが多いようです。年間の目標を立て、子どもたちの健やかな成長を援助できるような計画を策定します。年間行事などを確認し、4月~12月を4期に分けて作成していきましょう。
年間行事計画の一例を紹介します。
※園によっては保育の5領域(健康・人間関係・環境・言葉・表現)の項目別に記載する場合や「食育」や「家庭との連携」といった項目などを設けているケースもあるようです。
<注意点>
- 1年後の子どもたちの様子を想定して全体的なねらいを定める
- 子どもの年齢別に発達過程の特性を踏まえる
月案
月案は、月ごとの指導案のことをいいます。1週~5週に分けて、年間目標の達成に向けて1週ごとに活動のねらいを明確にして、作成しましょう。
月案の一例を紹介します。
<注意点>
- 月ごとの季節の行事、課外活動、設定保育などを取り入れて計画を立てる
- 子どもたちの普段の様子にあわせて適切なねらい、内容を記入する
- 前月の姿を振り返り、次の活動につなげる
週案
週案は、月案の内容をより明確化して月曜日〜金曜日までの活動計画を立てる必要があります。
週案の一例を紹介します。
<注意点>
- 天候にあわせて遊びを選べるように計画を立てる
- 子どもたちの興味や関心にあわせて活動を設定する
- 行事がある場合は、参加が楽しくなるような工夫を記載する
日案
日案は、時系列で一日の流れの詳細を記載します。
日案の一例を紹介します。
<注意点>
- 一日の予想される子どもたちの活動や環境構成などを具体的にイメージしながら記入する
- 行事に参加する際は内容に合わせてねらいを定める
- 子どもたちの前日の様子をみて活動を切り替える
- 欠席が多い日などは違う活動に切り替える
保育指導案の書き方のポイント
保育指導案を作成にあたって、文章が苦手な方や言葉が思いつかない方などもいるかもしれません。
保育指導案の作成の際の書き方のポイントを紹介します。
勤務(実習)を行う園の指導案を参考にする
保育士さんの中には学生のときに練習していた指導案のフォーマットが就職した園と異なり、書き方に戸惑う場合もあるかもしれません。
保育施設には運動や英語を主体とした園や音楽活動を取り入れている園など、保育方針が異なるため、各園によって指導案の書き方に違いがあることも多いようです。
まずは勤務(実習)する園で、指導案について以下の内容を確認するとよいかもしれません。
- 指導案作成時のルールの有無
- フォーマットの項目の確認(ねらい・内容・子どもの姿など)
- 執筆方法(手書き・パソコン活用など)
- 指導案のチェック体制(学年主任・クラス担当に提出など)
主任保育士やリーダーに指導案を提出した際に、チェックが厳しいという園もあるかもしれません。添削する方の過去の指導案などを見せて頂くなどすると、参考資料となり書きやすいかもしれません。
「保育所保育指針解説」を参考にする
保育指導案の作成する際は、「ねらいをどのように設定すればよいのか」と迷う方も多いようです。
子どもたちの保育活動を文章で表すことに対して難しいと感じる方もいるでしょう。
「保育所保育指針解説」には、保育所や幼稚園における教育内容である「五領域(健康・人間関係・環境・言葉・表現)」を具体的に明記してあるため、保育活動に必要な項目が記載されています。
年長児クラスを受け持つ方は、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の内容にも触れているため、参考にするとよさそうです。
また、その他にも「幼稚園教育要領解説」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説」には、保育活動の指標となる文章が記載されたものを活用して、指導案作成に活かしていきましょう。
最後に0歳児~5歳児の遊び別の指導案の参考文例を紹介します。
出典:保育所保育指針解説/厚生労働省
出典:幼稚園教育要領解説/文部科学省
出典:幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説/内閣府
0歳児保育指導案
活動名
ふれあい遊び(わらべ歌を歌いながら、子どもとふれ合う)
ねらい
- 保育士と子どもがふれあうことで、安心感や親しみをもち、愛着関係を育む
- 繰り返し同じ音色を聞くことで模倣する楽しさ、自然に他者と同じ気持ちを体験するうれしさを知る
用意するもの
特になし
内容
- わらべ歌を歌い、歌に合わせて子どもとふれ合う
- 手や指、足など保育士が子どもふれ合いながら、スキンシップを図りながら遊びを楽しむ
予想される子どもの姿
- 繰り返し歌を歌うことで他者とふれ合う楽しさや喜びを感じ、笑顔になる
- 身体を動かす楽しさを知り、抱っこされる安心感や音や声のリズムにふれる喜びを感じる
環境の構成
- 子どもたちの安全面を配慮し、危険なものは片づける
- 乳児の機嫌のよい時間を選び、子ども周囲をすっきりさせて、他に気が散らないように配慮する
保育士の援助・関わり方の注意点
- 衛生面に注意して活動を行う
- 子どもたちの爪がのびていないかを確認し、安全面に気をつけて遊びを行う
- 保育士自身も楽しい気持ちで、子どもにほほえみかけながら行う
1歳児保育指導案
活動名
リズムに合わせて身体を動かそう
ねらい
- 歌に合わせて、身体を動かすことを楽しみ、表現力を高める
- 音楽に興味関心をもち、保育士や子どもとふれ合う楽しさを知る
用意するもの
内容
- 楽曲を聞きながら、繰り返しリズム遊びを行う
- 動物の鳴き声や動作を取り入れ、表現する
予想される子どもの姿
- 歌に合わせて身体を動かし、他者とリズムを楽しむ喜びを知る
- 自発的に身体を動かし、音楽とふれ合う空間を楽しむ
環境の構成
- 安全面に配慮し、子ども同士の間隔を気をつけ、ぶつからないように配慮する
- 楽器を用いる際は点検を事前に行い、危険な点はないか気をつける
保育士の援助・関わり方の注意点
- 月齢に合わせて手拍子を促し、リズムに合わせて身体を動かす楽しさを伝える
- リズム遊びに対して前向きになれない子もいるため、無理強いせずに笑顔で対応する
- 他の保育士と連携し、事前に役割分担を行い、子どもの様子を見ながら活動を進める
2歳児保育指導案
活動名
縄跳びを使って跳んだり、跳ねたりと身体を動かそう
ねらい
- 縄跳びを使った運動遊びでいろいろな動きを楽しむ
- ルールを守り、順番を意識して遊ぶことで他者とのコミュ二ケーションの大切さを知る
用意するもの
内容
- のばした縄跳びを床に置き、順番に子どもに飛び越えてもらう
- 保育士が2人で縄跳びの端をもち、徐々に高さを上げたり、縄跳びをニョロニョロと動かしたりする。
予想される子どもの姿
- 縄跳びを飛び越える楽しさ知り、のびのびと身体を動かす
- 順番を守る子、守れない子などさまざまな子どもの姿が見られる
環境の構成
- 運動をしやすいように十分なスペースを確保する
- 安全面に配慮し、子ども同士の間隔に気をつけ、ぶつからないように配慮する
保育士の援助・関わり方の注意点
- 靴を履いて運動する場合は、靴が脱げそうになっていないか確認する
- ルールを伝え、順番に行うことができるように待っている子には座ってもらい、縄跳びを跳ぶ子には立ってもらうなど、子どもたちがわかりやすいように配慮する
- 子どもたちの運動能力には個人差があるため、縄跳びの高さなどは子どもの様子を見ながら危険のない程度で配慮して行う
3歳児保育指導案
活動名
粘土遊びでものを作る楽しさを知ろう
ねらい
- 粘土の性質を肌で感じることで、まるめる、のばすなど動作に伴ってものを作る楽しさを感じる
- 粘土を使って好きなものを作り、表現する楽しさを知る
用意するもの
内容
- 粘土を使ってものづくりを楽しむ
- 動物や人の顔など好きなものを作る
予想される子どもの姿
- 粘土をちぎったり、まるめたりして質感を楽しむ
- 粘土で自分の興味のある形を作り、指や手を使う喜びを知る
環境の構成
- 製作を楽しむスペースを確保し、机を並べておく
- 机の並べ方は子ども同士でお互いの製作の様子がよく見えるように、円を意識して並べるなど工夫する
保育士の援助・関わり方の注意点
- 粘土板をお道具箱から班ごとにもってくるなど子どもたちがスムーズに製作の準備ができるように配慮する
- 導入時に保育士が、「これは何か知っているかな?」など粘土を見せるなどして、粘土を使った遊びに関心や意欲を高められるように工夫する
- 子どもたちの作品を見せ合う時間を作り、お互いの製作に対して興味関心をもつ時間を設ける
4歳児保育指導案
活動名
ごっこ遊び(お店屋さんごっこを通して他者との関りを楽しもう)
ねらい
- 班ごとにお店づくりを計画し、友だちと協力して活動をする楽しさを知る
- 役割分担を行い、お店で売れるものを工夫して製作する
- 「いらっしゃいませ」など売り買いの言葉を使い、「ありがとう」などお礼を伝える大切を知る
用意するもの
- 紙皿
- 紙コップ
- 色紙
- 折り紙
- 袋
- のり
- はさみ
- 絵具
その他話し合いで必要となったもの
内容
- 班ごとにお店屋さんを決め、売るものを製作する(お菓子屋さん、果もの屋さん、郵便屋さんなど)
- 班ごとにやりたいお店が一緒になった場合はくじで決める
- お金やお財布を作る場合は事前に作成時間を設ける
- 品物の値段を決めるが、数字が書けない子もいるため、赤(100円)、黄(200円)などシールで色分けして品物に貼る仕組みにする
- お店屋さんの店員、お客さんの役割分担を行い、前半・後半に分けて、交代制にする
予想される子どもの姿
- 子どもたち同士で意見交換を行い、自由に発言し、お店や品物、値段や役割分担を決める
- 意見交換を行う際は、意見がぶつかり合う場合もある
- 品物の製作を行う際は、助け合いながら製作する姿がある
- お店屋さん、お客さんを演じて、言葉のやり取りを楽しむ
環境の構成
- 班で意見交換や製作する際は、班ごとに子ども同士がよく見えるようにする
- お店屋さんを設定する際は、充分なスペースの中で行い、安全面に配慮する
保育士の援助・関わり方の注意点
- お店屋さんごっこは準備に時間がかかる場合もあるため、製作→ごっこ遊びについて計画的に行うことができるようにタイムスケジュールをしっかりと組む
- 子どもたちがお互いの意見がぶつかった場合は、自発性を尊重し、見守りながら適切な言葉がけを行う
- 話し合いに参加していない子や意見をなかなか言えない子がいる場合は、ときには「○○くんはどう思う?」と保育士が話し合いに入って、意見を求めるなど工夫する
- 製作は事前に必要なものを用意し、子どもたちにこの材料の中から好きなものを作るように伝えると、話し合いがしやすい
5歳児保育指導案
活動名
フルーツバスケットを行い、ルールに沿ってゲームを楽しもう
ねらい
- 友だちと場を共有する喜びを知る
- 友だちとゲームを通して協調性を育む
- ルールに沿ってゲームを行い、身体を動かす
用意するもの
内容
- グループ分けを行い、果もの(りんご・みかん・もも・すいかなど)のメダルをかける
- 円形に椅子を並べ、オニは円の真ん中に立ち、フルーツの名前をいい、言われたフルーツのグループのメンバーは他の椅子に移動し、オニも空いた椅子を目指して移動し、最後に椅子に座れなかった子どもがオニとなる(繰り返し行う)。オニは「フルーツバスケット」と言った場合は、全員が移動する
環境の構成
- 円形に椅子を並べて、安全面に配慮する
- 子どもたちが動いても、床が滑らないか確認する
予想される子どもの姿
- 果ものの名前を言い、子ども同士で様子を見ながら椅子に座る
- 一人の子がオニが続いた場合は、「○○ちゃん変わろうか?」など思いやりをもって発言する子どもがいる
- 椅子に座る際に子ども同士でぶつかった場合はじゃんけんをしてどちらが座るか決めている
保育士の援助・関わり方の注意点
- ルールなどを伝えた後は子どもたちの様子を見ながらあまり割って入らずに、子どもたちの自発性を育むことを大切にする
- 椅子を並べる、メダルを配るなど、子ども同士で行えるものは子どもに任せて、自分たちでゲームを展開できるように見守る
保育指導案の書き方を把握し、保育の質の向上を目指そう
保育指導案は保育の道筋を立てるうえで重要なものです。子どもたちの様子にあわせて、ときには内容を変更することも大切になります。
また、作成に時間がかかることから、自宅に持ち帰る保育士さんもいるかもしれません。
園側は仕事量が多いと呼ばれる保育士さんの業務の効率化を目指して、ICTシステムの導入やパソコンやタブレットの活用などを検討することも必要ではないでしょうか。
特にICTシステムを導入すれば、園児の情報管理や職員のシフト調整なども容易になることから、働きやすい環境を作り上げることが可能となるでしょう。
保育士さんの働きをサポートすることも大切にしつつ、指導案作りに集中できる環境を作り上げていきましょう。